「医学部の学費は6年間でいくらかかるのだろう?」と調べると、数千万円におよぶ大きな金額がずらりと並びます。しかし、その総額の数字だけを見て志望校を決めてしまうと、いざ合格したあとの支払いで慌てることになりかねません。
本当に比べるべき数字は、「6年間の学納金」と「入学までに用意するお金」の二つです。「総額を払える見通し」に加えて、「いつ・いくら必要になるのか」という支払いの時期まで並べて整理しておくことで、ご家族での話し合いもぐっとスムーズになります。
結論:国立は約350万円、私立は平均約3,214万円
先に数字だけ知りたい人のために、全国の医学部の6年間の学納金(大学に納めるお金)をまとめました。2027年度の各大学の公式資料をもとにしています。
| 区分 | 6年間の学納金 |
|---|---|
| 国立(標準額) | 349万6,800円 |
| 私立27校の平均 | 約3,214万円 |
| 私立で最も安い | 1,830万円 |
| 私立で最も高い | 4,743万円 |
私立で最も安いのは国際医療福祉大学、最も高いのは川崎医科大学です。同じ私立でも3,000万円近い差があるので、「私立は高い」とひとまとめにせず、志望校ごとの金額で比べるのが大事です。
- 私立27校を安い順に並べた一覧は、医学部の学費一覧・ランキングで見られます。
- 大学ごとの内訳(入学金・授業料・施設設備費)は、各大学のページに載せています。たとえば順天堂大学は2,080万円、日本大学は3,310万円です。
この記事では、この総額に加えて「いつ・いくら払うのか」を整理する方法を説明します。
授業料だけを6倍すると、私立の学費を取りこぼす
大学が公表している費用表には、入学金や授業料のほか、施設設備費、教育充実費などが分かれて記載されています。まずは、これら大学へ納める費用をもれなく足し合わせる必要があります。1年次と2年次以降で金額が異なる場合は、学年ごとの小計をしっかり確認しましょう。
たとえば、順天堂大学医学部の公表額を見ると、1年次が290万円、2〜6年次が各358万円となっています。計算すると、290万円+358万円×5年で、6年間の学納金は2,080万円です。もし初年度の290万円だけを単純に6倍してしまうと1,740万円となり、340万円も少なく見積もってしまうことになります。
さらに同大学では、初年度に寮費・諸会費・教材費が別途必要と明記されています。「6年間の学費」として示されている金額の中に何が含まれていて、何が別枠になっているのか。費用表の注記までしっかり読み込んで仕分けることが大切です。
国立の金額も、志望大学の表で確かめる
国立大学の場合も、必ず志望校の公表データを確認しましょう。名古屋大学の公表額では、学部の入学料が28万2,000円、年間の授業料が53万5,800円となっています。授業料が同額のまま6年間通う計算であれば、28万2,000円+53万5,800円×6年=349万6,800円となります。
「国立大学だから全国一律で同じ金額だろう」と大まかに捉えず、必ず志望する大学の入学料・授業料を用いて計算してください。以下の表は、2026年9月11日に確認した各大学の公表額をもとに計算したものです。2027年度入学者に向けて改定が案内された場合は、最新の金額へ置き換えて確認してください。
| 大学・計算の前提 | 初年度/6年間の学納金 |
|---|---|
| 名古屋大学:授業料が6年間同額の場合 | 81万7,800円/349万6,800円 |
| 順天堂大学医学部:通常の学費区分 | 290万円/2,080万円 |
なお、この比較には家賃や食費、受験料、引っ越し代などは含まれていません。自宅から通える私立大学と、一人暮らしになる国立大学を比較する場合は、学費に加えて生活費を合算して考える必要があります。生活費の具体的な組み立て方については、医学部で学費以外にかかるお金で確認できます。
「初年度の学費」と「合格後すぐ払う金額」は別
「初年度の学費は、1年間かけて分割して用意すればよい」とは限りません。合格通知や入学手続要項を取り寄せて、最初の納付額や納付期限、分納制度の有無をしっかり抜き出す必要があります。他の併願校の結果を待てるかどうかも、この日程と金額によって左右されます。
- 入学手続きの締め切り日と、その期日までに納付が必要な金額
- 入学金・授業料などの内訳と、分納が認められている費目
- 入学を辞退した際に返還される費目、返還申請の期限、および返金される時期
- 奨学金や授業料減免を利用する場合、いったん納付すべき金額と差額の精算方法
たとえば、先に合格したA大学へ入学手続きとして150万円を納付し、その返還を受ける前に本命であるB大学へ100万円を納めなければならない場合、一時的にお手元に250万円の現金が必要となります。最終的な自己負担額が抑えられるとしても、「支払期日の時点で口座の資金が足りるかどうか」は全く別の問題として準備しなければなりません。
返還の対象となる費目や申請期限は、必ず大学の手続要項から書き写して確認しましょう。「辞退すれば戻ってくるはず」と楽観視して資金計画を立てるのではなく、「返還されない費用」と「返金されるまで手元から動かせなくなる費用」を明確に分けておくことが、資金不足を防ぐポイントです。
奨学金は「もらえる額」だけで総額から引かない
給付型、貸与型、あるいは授業料の減免制度など、支援の種類によって家計への影響は大きく異なります。給付や減免は実際の負担額を直接軽減できますが、貸与型の場合は将来の返還計画まで見据えて家族で話し合っておかなければなりません。また、現在申請中の支援と、すでに採用が決まった支援は、資金計算の表でも明確に区別しておきましょう。
まずは支援を差し引かない学費の全体像を算出し、そのうえで対象となる制度の条件や支援見込み額を別欄に書き出すのが確実です。この形にしておけば、万が一採用結果が変わった場合でも、すぐに再計算できます。多子世帯の授業料支援制度の利用を検討している方は、医学部で使える多子世帯支援と家計に残る負担もあわせてご確認ください。
特待生枠や、卒業後の勤務地などの条件が付帯する地域枠・修学資金制度などは、通常の一般学費と混ぜずに切り離して比較することが重要です。減免される金額の大きさだけに目を奪われて進路を決めるのではなく、継続条件や卒業後の働き方まで納得した上で選択しましょう。
家族で見る表は、志望校ごとにこの5行でいい
志望校ごとに資金を比較する際は、以下の5行をまとめたシンプルなシートを用意するだけで十分です。
| 書く項目 | 入れる数字・日付 |
|---|---|
| 6年間の学納金 | 各年度の小計を足し合わせた合計額。改定案内があればその内容も記録する |
| 学納金以外 | 寮費・教材費・家賃など、大学の学納金費用表に含まれていない金額 |
| 入学前の支払い | 合格直後から入学までに必要な納付額と納付期限を、日付順に並べる |
| 支援 | 利用を検討している制度名、採用状況、支援額、適用・入金の時期 |
| 家計から用意する額 | 支援を引く前の全額と、確定した支援を反映させた後の実質額の両方 |
最初から全国の大学を細かく調べる必要はありません。まずは検討している候補校を2校選び、横に並べて総額の差と入学前の支払いスケジュールを比較してみてください。それだけでも、「この大学なら無理なく進学できる」という見通しの具体性が大きく変わってきます。
今日から動き出すなら、まずは気になる志望校の「学費表」と「入学手続きの案内」をダウンロードして保存することから始めましょう。まだ今年度の合格者向け要項が公表されていない時期であれば、納付期限などの未公表欄は空欄のままにしておき、公表されたタイミングで書き込めば問題ありません。

