「私立医学部の出願校を決めるとき、一次試験の日程だけを見て『この5校なら重ならないから受けられる』と決めていませんか?」
実は、医学部受験の現場で本当につまずきやすいのは、試験日そのものではありません。
- 一次試験の翌日に遠方での試験が入り、体力と移動時間が限界を迎える
- 一次合格後に大学から指定された二次試験日が、他校の一次試験と丸かぶりする
- 本命校の合格発表を待つ前に、併願校の入学金・学費の振込期限が来てしまう
こうしたトラブルを防ぐうえで確実なのは、試験日だけでなく「移動・二次試験候補日・入学手続期限」までを1枚のシートにすべて並べて比べることです。
出願数をむやみに増やすことよりも、「万全の体調で本命校を受けられる日程」と「合格したときに後悔なく進学先を選べる資金計画」を両立させること。 この記事では、大学公式の一次情報をベースに、ご家庭で今日から作れる「実践的な併願比較表」の作り方を分かりやすく解説します。
結論:2027年度は2月1日〜4日に私立の一次試験が集中する
2027年度の私立医学部の一次試験は、1月21日(木)の帝京大学から始まります。特に2月1日〜4日は、毎日4〜6校の一次試験が重なります。同じ日の大学からは1校しか受けられないので、併願パターンは「重なる日にどの1校を選ぶか」でほぼ決まります。
| 試験日 | 同じ日に一次試験がある私立 |
|---|---|
| 2月1日(月) 5校 | 川崎医科大学、久留米大学、日本大学、日本医科大学、東京女子医科大学 |
| 2月2日(火) 5校 | 福岡大学、関西医科大学、北里大学、杏林大学、東海大学 |
| 2月3日(水) 4校 | 岩手医科大学、順天堂大学、金沢医科大学、東海大学 |
| 2月4日(木) 6校 | 藤田医科大学、兵庫医科大学、金沢医科大学、聖マリアンナ医科大学、埼玉医科大学、東北医科薬科大学 |
東海大学と金沢医科大学は一次試験の日付が複数あるので、どの日で受けるかで重なり方が変わります。国公立の前期日程は2月25日(木)からなので、私立の前期で合格を確保してから国公立に臨む組み方もできます。(2026年9月24日時点、各大学の2027年度募集要項)
全日程は医学部の入試日程カレンダー(併願パターンの組み方つき)、出願の締切は医学部の出願締切一覧にまとめています。このあと説明する「6つの日付」の表は、この2つから埋めると早いです。
1. 最初に整理すべき「6つの日付」|一次試験日だけで組むと失敗する理由
併願校を検討する際は、まず大学・入試方式ごとに次の「6つの日付」を1行に並べます。
| 確認する項目 | 併願表に書き込む具体的な内容 |
|---|---|
| 1. 出願締切 | Web登録期限、検定料支払い期限、書類提出(消印有効か必着か)を分けて記載 |
| 2. 一次試験 | 試験日、集合時刻、試験会場(本校か地方会場か) |
| 3. 一次合格発表 | 発表日時、確認方法(Web照会、掲示等) |
| 4. 二次試験 | 日程(確定日・複数日の選択制・大学指定のいずれか) |
| 5. 最終合格発表 | 発表日時、手続書類の到着予定日 |
| 6. 入学手続期限 | 納付期日、納付金額、二段階手続(分納)の可否 |
「一次試験の日が空いているかどうか」だけの一覧では不十分です。特に注意が必要なのが二次試験(面接・小論文など)の日程です。
たとえば、関西医科大学の2027年度一般選抜(前期)では、一次試験が2月2日に行われ、二次試験は2月20日または21日のうち大学が指定する予定となっています(志願者の希望を考慮して決定)。 このように大学指定で二次試験日が決まる場合、第1希望の日程が通るとは限りません。併願表には二次試験の候補日(2日間とも)をあらかじめブロック(仮押さえ)しておく必要があります。
2. 日付の次は「移動と宿泊」を検証|東京・大阪間の連続受験は可能か?
日程上の重なりがなくても、前日の試験終了後に次の試験会場へ安全に到着できなければ、その併願パターンは成立しません。
候補校が決まったら、地図アプリや乗換案内を使い、次の4ステップで移動ルートを確認します。
- 試験終了から駅までの実時間:試験終了直後は退出や混雑で、普段より駅に着くまで時間がかかる場合があります。
- 最終交通機関の時刻:新幹線や飛行機の最終便に間に合うか、悪天候時の代替経路はあるかを調べます。
- 宿泊地とチェックイン:会場近くのホテルが確保できるか、深夜チェックインに対応しているかを確認します。
- 翌朝の集合時刻:朝のラッシュや雪などの天候悪化を想定し、集合時刻より十分に早く会場へ着ける余裕があるか判断します。
「東京の翌日に大阪で受験」といった都市間移動はもちろんのこと、同一都市圏内であっても会場が郊外にある場合は移動に予想以上の時間がかかります。もし試験会場が「未定」となっている場合は、勝手に本校舎と決めつけず「会場未定」と明記し、要項発表後に再確認するタスクを設けておきましょう。
また、タイトな移動を伴う併願校は、交通費や宿泊費も併願コストとして見積もる必要があります。受験料(検定料)だけで予算を組むと、実際の出費とのずれが生じます。
3. 二次試験は「受かってから考える」では遅い
大学・方式によっては、一次試験(学科)の合格者が後日、二次試験(面接・小論文など)に進みます。一次試験のスケジュールを過密に詰め込みすぎると、「せっかくA校の一次に受かったのに、二次試験の日が本命B校の一次試験や長距離移動と重なって受けられない」という事態が起こります。
日本大学医学部の「GUIDEBOOK 2027」に記載された一般選抜N全学統一方式(第1期)の予定を例に見ると、次のように複数の日程が動きます。
- 一次試験:2月1日
- 二次試験:2月11日
- 二次合格発表:2月17日
- 第一次入学手続締切:2月24日
- 最終入学手続締切:3月11日
このように、1校受けるだけでも受験から手続き完了までに2週間〜1か月以上のスパンがあります。 併願表を作成する際は、まだ受かるか分からない二次試験日であっても薄いグレーなどでカレンダーに仮置きしておき、確定後に上書きする運用を徹底してください。候補日が複数ある場合は、可能性のある日程をすべて埋めて重複をチェックします。
4. 入学手続金は「返還される額」と「戻らない可能性がある額」を仕分ける
併願校選びで慎重に見たいのが、合格発表と入学手続金の締切タイミングです。本命校の合格発表を待つ間、進学できる状態を確保するために、併願校へ入学金や前期学納金の納付が必要になる場合があります。
各大学について、募集要項をもとに以下の3点を必ず整理しておきましょう。
- 期限までに実際に振り込む総額(入学金 + 授業料などの前期学納金)
- 期日までに入学を辞退した場合、返還される金額(授業料や施設設備費など)
- 辞退しても原則として返還されない金額(入学金など)
入学金の返還条件や納付猶予制度(本命校の合格発表日まで手続きを待ってくれる制度)、二次手続き(分納)の有無は大学ごとに大きく異なります。文部科学省からも学生負担軽減の通知が出されていますが、私立医学部の具体的な対応は一律ではありません。
必ず各大学の「学生募集要項」および「入学手続要項」の返還規定を確認してください。
ご家庭で先に決めるべきは「戻らない可能性がある額の上限」
日程表を前にご家族で話し合うべき最重要テーマは、「本命校の結果を待つために、戻ってこないお金(入学金など)を合計いくらまで許容できるか」という上限ラインです。
たとえば「戻らない可能性がある入学手続金は最大○万円まで」と家庭ごとの上限を決めておけば、日程上は受けられる学校でも、「本命校の発表前に複数校分の納付が必要になる組み合わせ」をあらかじめ併願プランから除外できます。
5. 「予定版」と「確定版」の情報を絶対に混同しない
秋口の段階では、前年度の入試概要や当年度の予告情報しか出ておらず、当年度の確定した「学生募集要項」が公開されていない大学も少なくありません。 たとえば藤田医科大学では、2027年度医学部一般入試の学生募集要項の公開時期を10月ごろとアナウンスしています。
概要レベルの情報で早期に大枠のスケジュールを組むこと自体は素晴らしい進め方ですが、確定前の情報には必ず「暫定」のマークを付け、以下の管理欄を併記してください。
- 参照した大学公式URL
- 情報を確認した日付
- 正式な募集要項の公開予定時期
- 再確認を行う期日と担当者(本人または保護者)
民間の学校比較サイトやまとめ記事は志望校探しのきっかけには便利ですが、出願・納付の最終判断は必ず「その年度・その入試方式の大学公式要項」を直接確認してください。前年度の日程や返還ルールをそのまま当年度へ移さないようにしましょう。
6. 本命に備えるために「候補校を削る」5つの判断基準
1枚の併願表に候補校を並べ終えたら、次は「増やす」のではなく「本命に備えるために削る」作業に入ります。以下の優先順位に沿って、無理のあるプランを間引いていきましょう。
- 本命校の一次・二次候補日と前後の移動予備日を死守する
- 同日試験、移動が物理的に困難な組み合わせ、二次候補日との致命的な衝突を外す
- 合格通知をもらっても、実質的に進学する意志のない学校を外す
- 戻らない可能性がある入学手続金が、家庭で決めた予算上限を超える学校を外す
- 連続受験による過度の疲労を防ぐため、「休養日(体調を整え、復習する日)」を確保する
受験校が減ったとしても、本命校へ落ち着いて臨めるのであれば、計画の無理を減らせます。連日受験で体力を消耗し、本命日に備える時間がなくなるなら、出願数が多くても実行しやすい併願計画とはいえません。
7. 家族会議のゴールは「誰が何を管理するか」の役割分担
受験勉強が佳境を迎える直前期に、受験生本人が出願締切、ホテルの予約、振込手続きのすべてを1人で管理するのはキャパシティを超えてしまいます。作成した併願表は家族で共有し、明確に役割を分担しましょう。
- 受験生本人:志望順位の確定、過去問対策、一次・二次試験の合否確認と大学からの個別連絡の共有
- 保護者:募集要項の取り寄せ、出願書類のチェック、納付期限・返還条件の精査、銀行振込の手配
- 共通(どちらか1名):交通機関・ホテルの予約とキャンセル期限のスケジュール管理
また、出願や納付は、大学の公式締切より前に家庭内締切を置くと安心です。書類の不備、システムエラー、金融機関の営業時間外トラブルに対応できる余裕を取ります。手続きが完了したら、日付と担当者名を記録し、受領証や完了画面のキャプチャを家族共有フォルダへ保存しておきましょう。
まとめ|今日やるべき最初の一歩は「候補3校」の書き出しから
最初から全国の私立医学部をすべて網羅して調べる必要はありません。
まずは、「本命校を含む上位候補の3校」について、以下の項目を1枚の用紙やスプレッドシートに書き出すことから始めてみてください。
- 一次試験日と試験会場
- 二次試験の候補日(確定日だけでなく全候補)
- 最終合格発表日
- 入学手続期限と、辞退時に戻らない金額(入学金)
「単に日程上受けられる学校」ではなく、「本命校に備える時間と体力を保ち、受かった後に家族で選べる学校」を残すこと。
入試直前にスケジュールやお金の問題で焦らないよう、余裕のある今のうちに「わが家の併願カレンダー」を完成させておきましょう。
本記事で参考にした大学公式・公的情報
- 関西医科大学:令和9年度 医学部入学試験概要
- 日本大学医学部:GUIDEBOOK 2027
- 藤田医科大学:入試情報
- 藤田医科大学:入学辞退方法について
- 文部科学省:私立大学の入学料に係る学生の負担軽減について
※本記事の日程・手続情報は2026年9月13日時点の公表データに基づいています。入試日程や募集要項は今後更新・変更される可能性があります。出願および入学手続の際は、必ず受験年度と方式が合致する大学公式の最新学生募集要項をご確認ください。

