「私立医学部も共通テストで出願できるなら、チャンスを広げるために出願校を増やしたほうがいいのだろうか?」
国公立大学と併願する方はもちろん、私立専願で対策を進めている方にとっても、共通テスト利用選抜の選び方は大いに悩むポイントです。
しかし、やみくもに出願数を増やすのは禁物です。最初に見るべきは、大学名の数ではなく「いま勉強している科目だけで出願できるか」「二次試験などの追加負担に対応できるか」の2点です。「共通テスト利用」と一口に言っても、必要な教科・科目数や個別試験の内容は大学ごとに大きく異なります。
この記事では、2027年度の医学科公式情報をもとに、特徴の違いが分かりやすい帝京大学・埼玉医科大学・関西医科大学の3校をピックアップして比較します。単なる難易度ランキングではなく、ご自身の志望校を検討する際にそのまま役立つ「実践的な比較手順」をわかりやすく解説します。
結論:私立の共通テスト利用は、多くが共テ本番の前に締め切る
2027年度の共通テストは1月16日(土)・17日(日)です。私立医学部の共通テスト利用選抜は、その前日(1月15日)までに出願を締め切る大学が中心です。「自己採点を見てから出す」は、ほとんどの大学でできません。
当サイトの大学ページで、2027年度の募集要項から締切まで確かめた方式を並べます(共テ満点・出願締切の順)。
共テ本番より前に締め切る方式
| 大学 | 共テ満点 | 締切 |
|---|---|---|
| 福岡大(Ⅰ期) | 700点 | 1/12 |
| 東京医科 | 900点 | 1/13 |
| 帝京(前期) | 300点* | 1/15 |
| 北里(前期) | 500点 | 1/15 |
| 聖マリアンナ | 710点 | 1/15 |
| 愛知医科 | 700点 | 1/15 |
| 大阪医科薬科 | 700点 | 1/15 |
| 近畿(前期) | 500点 | 1/15 |
| 関西医科(前期) | 800点 | 1/16* |
*帝京は3科目方式(300点)と5科目方式(500点)から選びます。関西医科はWeb出願が1月15日まで、書類の郵送が1月16日消印有効です。締切の「必着」「消印有効」「Web登録」の違いは、各大学のページで確認できます。
共テのあとでも出せる方式
| 大学 | 共テ満点 | 締切 |
|---|---|---|
| 藤田医科 | 750点 | 1/18 |
| 東海 | 600点 | 1/18 |
| 東北医科薬科 | 710点 | 1/24 |
| 近畿(中期) | 400点 | 2/1 |
| 関西医科(後期) | 600点 | 2/20 |
| 産業医科(C) | 900点 | 2/21 |
| 近畿(後期) | 300点 | 2/25 |
藤田医科と東海は1月18日必着で、共テ2日目の翌日です。自己採点を見てから書類を送るのは日程的に厳しいので、共テ前に出しておく方式と考えましょう。自己採点を見てから落ち着いて選べるのは、東北医科薬科(1月24日必着)以降の方式です。
ほかの私立の日程もまとめて見るなら医学部の出願締切一覧、共テと個別試験の配点の比率は医学部の配点一覧で大学を横に並べて比べられます。
1. まずは試験形式を整理:「一般選抜」「利用」「併用」の違い
私立医学部の入試方式は、大きく3つに分類されます。まずはそれぞれの特徴を把握しておきましょう。
| 入試方式 | 確認すべき重要ポイント |
|---|---|
| 大学独自の一般選抜 | 大学独自の学力試験(学科試験の日程・科目)+面接・小論文 |
| 共通テスト利用選抜 | 共通テストの指定科目の成績 + 大学で行われる二次選考(面接・小論文など) |
| 共通テスト・一般併用選抜 | 共通テストの成績 + 大学独自の学科試験・二次選考を組み合わせて判定 |
「共通テスト利用=共通テストの点数だけで合否が決まる」とは限りません。医学部ではほとんどの場合、二次選考(面接・小論文など)が課されます。
たとえば関西医科大学の共通テスト利用(前期)では個別面接が必須です。さらに同大学の「併用試験」では、共通テストの点数に加えて一般選抜(前期)の英語・数学・理科の独自試験も受験する必要があります。
また、同じ大学であっても、一般選抜に出願したからといって共通テスト利用にも自動でエントリーされるわけではありません。 出願サイトで希望する方式を個別に選択し、それぞれの検定料を納める必要があるため、手続きの漏れがないよう注意しましょう。
2. 3大学の科目比較:国語・理科・地歴公民の負担を見極める
共通テスト利用を検討する際、最大の分かれ道となるのが「必要科目」です。以下の表で3大学の概要を比べてみましょう。
| 大学・方式 | 共通テストで必要な科目(概要) | 二次選考・公式情報 |
|---|---|---|
| 帝京大学/共通テスト利用 | 【3科目方式】 英語+指定範囲から高得点2科目/【5科目方式】 英語・国語+数学・理科から3科目/※国語は「近代以降の文章のみ」と「古典(古文・漢文)含む」を両方換算し、高い方を採用。/※5科目方式単独での出願は不可(3科目方式との併願必須)。 | 二次選考:英語読解・課題作文・面接/帝京大学 入試科目表 |
| 埼玉医科大学/共通テスト利用(前期) | 【4教科6科目】/英語、数学(Ⅰ・A、Ⅱ・B・C)、理科(物理・化学・生物から2科目)、国語(近代以降の文章+古文+漢文) | 二次選考:小論文・面接/埼玉医科大学 入試情報 |
| 関西医科大学/共通テスト利用(前期) | 【5教科7科目】/英語、数学(Ⅰ・A、Ⅱ・B・C)、理科(物理・化学・生物から2科目)、国語(近代以降の文章)、地歴・公民(指定科目から1科目) | 二次選考:個別面接/関西医科大学 入試情報 |
※選択科目の詳細な組み合わせ条件などは、必ず各大学の最新の募集要項をご確認ください。
科目の違いからわかる戦略のポイント
- 私立専願(英・数・理に絞っている人):
埼玉医科大学(古文・漢文必須)や関西医科大学(地歴公民必須)を出願しようとすると、新たな科目の勉強負担が発生してしまいます。現在の学習リソースを圧迫しないか慎重な判断が必要です。
- 国公立併願者(幅広く共通テスト対策をしている人):
5教科7科目型や国語を含む方式は、私立専願組が敬遠しやすいため、国公立向けに対策してきた総合力を存分に活かせるチャンスとなります。
- 軽量に見える方式の注意点:
帝京大学の3科目方式は一見負担が軽く見えますが、英語は必須であり、残り2科目を「数学Ⅰ・A+数学Ⅱ・B・C」のように同一教科から選ぶことはできません。募集要項の選択ルールをご自身の受験科目と照らし合わせることが不可欠です。
3. 「配点比率」の確認:同じ共通テストの点数でも価値が変わる
同じ大学であっても、「共通テスト利用」と「一般併用」では配点バランスが大きく変わります。関西医科大学を例に見てみましょう。
- 共通テスト利用(前期):800点満点
(英語 200点 / 数学 200点 / 理科 200点 / 国語 100点 / 地歴公民 100点)
- 共通テスト・一般併用試験:1,200点満点
- 共通テスト:600点満点(英語 100点 / 数学 100点 / 理科 200点 / 国語 100点 / 地歴公民 100点)
- 大学独自試験:600点満点(英語 200点 / 数学 200点 / 理科 200点)
ご覧の通り、単独利用では200点満点だった英語と数学が、併用試験では100点に圧縮され、そのぶん大学独自の個別学科試験(600点分)が合否を大きく左右します。(詳細は関西医科大学の併用試験案内を参照)
マーク式の共通テスト問題が得意なのか、それとも大学特有の記述・難問記述で差をつけられるタイプなのかによって、有利な方式はまったく異なります。「受けられる方式すべてに出願すれば有利」と決めつけず、過去問の相性や移動の負担、対策にかける時間まで計算して選ぶことが大切です。
4. 出願締切の落とし穴:「自己採点後に出願できる」とは限らない
共通テスト利用を検討する際、最も注意すべきなのが出願締切日です。
国公立大学のように「共通テスト本番の点数(自己採点結果)を見てから出願先を決める」ことをイメージしていると、私立医学部では手遅れになるケースが多々あります。
今回取り上げた3大学(帝京・埼玉医科・関西医科)の対象方式はいずれも、共通テスト本試験(2027年1月16日・17日)よりも前の「1月15日(金)」がWeb出願の締切です(関西医科大学は書類の郵送のみ1月16日消印有効)。
「自己採点の結果が良ければ出願しよう」と考えていると、出願すらできずに終わってしまいます。 Web登録、受験料の払い込み、書類の提出(消印有効か必着か)の締切を、方式ごとにカレンダーへ正確に書き込んでおきましょう。
【注意】共通テスト自体の出願期間は秋です 大学への出願とは別に、大学入試センターへの「共通テスト出願手続き」が必要です。2027年度共通テストの出願内容登録期間は2026年9月15日(火)10:00 〜 10月2日(金)17:00となっています。現役生・既卒生問わず、登録漏れがないよう大学入試センターの受験案内を必ず確認してください。
5. 出願校を迷わず決める「5つのチェックメモ」
出願候補が増えて迷ったときは、検討している方式ごとに以下の5項目を1行ずつ書き出してみてください。
- 必要科目: いま自分が勉強している教科・科目だけで過不足なく出願できるか?
- 得点換算: 国語の出題範囲(現代文のみか古文・漢文含むか)、英語リーディング・リスニングの比率は自分に有利か?
- 二次負担: 個別試験(面接・小論文・独自学科試験)の対策にどのくらい時間を割かれるか?現地への移動負担はあるか?
- 費用面: 追加の検定料や遠征宿泊費、合格後の入学金・学費納入のスケジュールに無理はないか?
- 日程重複: 出願締切や二次試験の日程が、本命の国公立や他大学の試験日とバッティングしていないか?
「すでに対策済みの科目で出願でき、個別試験の日程も重ならず、学費面も家族と合意できている」――ここまで明確な理由が揃っていれば、出願する価値は大いにあります。逆に、「何となく受かりそうだから」「名前を知っているから」という曖昧な理由であれば、貴重な直前期の集中力を維持するためにも、無理に追加せず見送るのが賢明です。
学費や進路設計を含めて国公立と私立の組み合わせをじっくり考えたい方は、医学部の国公立・私立の選び方もぜひ参考にしてください。
まずは気になる2〜3校の公式科目表を手元に置き、小さな比較から始めてみましょう。
※本記事の情報は、2026年9月11日時点で確認された各大学の2027年度公式発表内容に基づいています。入試科目・配点・日程等は変更される場合があるため、出願の際は必ず各大学が発行する最新の「学生募集要項」をご確認ください。

