OSCE(客観的臨床能力試験)の練習をしようと友人と集まったものの、「動画を一緒に見て、なんとなく手順を確認して終わってしまった」という経験はありませんか。時間をかけて練習したつもりでも、いざ自分一人で通して実践できるかとなると、心もとなさが残ってしまうものです。
そんなときは、練習の進め方を少し見直してみましょう。
おすすめなのは、3人で「受験者役・患者役・観察役」を交代しながら、短時間の振り返りとやり直しをセットにする方法です。この形を取り入れることで、ただ「手順を知っている」だけの状態から、「患者役にしっかり説明しながら動く」という実践的な練習へとスムーズにステップアップできます。
1. まず大学の案内と、現行の学修資料をそろえる
臨床実習前OSCEの準備を始めるときは、まず所属大学から指定された実習資料と、医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)の現行資料を手元にそろえましょう。
CATOのWebサイトには過去の資料もあわせて掲載されていることがあるため、検索結果でヒットしたPDFをそのまま使うのではなく、必ず「今年度の学修用資料」であるかを確認してください。
たとえば『CATO 2026年度版 学修と受験にあたって』では、学修・評価項目と教育用動画の両方を活用することが案内されています。教育用動画だけで全項目が網羅されているわけではないため、「動画でおおまかな全体の流れをつかみ、評価項目表で細かな抜け漏れをチェックする」というように使い分けるのが効果的です。
なお、練習に用いる課題は、公開されている例題や大学で使用が認められているものから選びましょう。過去に受験した先輩などから実際の試験内容を聞き出して再現するような進め方は避けてください。
動画で練習できるOSCE教材
「OSCEの動画ってどれを見ればいいの?」という人向けに、確かめて紹介できるものを2つに絞りました。動画は見るだけで終わらせず、次の節からの3人練習の前に「今日の手順」をそろえる用途で使うのがコツです。
- CATO「動画で見る共用試験」:共用試験を実施するCATO(医療系大学間共用試験実施評価機構)が、医学系OSCEの概説動画を公式サイトで公開しています。本番の流れと雰囲気をつかむ最初の1本に向いています。動画で見る共用試験(CATO)
- 『診察ができる vol.1 身体診察』(メディックメディア):医療面接や腹部・神経診察など130本以上の診察動画と、38本の聴診音が付いた本です(2023年7月発行・464頁・8,800円)。本に付いたシリアル番号で、mediLinkのアプリかブラウザから視聴でき、視聴期限はありません。発行元もOSCE・臨床実習対策向けとしています。
動画は1本ずつ止めながら、手技の順番を自分の言葉で書き出しておくと、練習で「次に何をするか」で止まらなくなります。
2. 3人の役割を明確に分けると、見落としが減る
3人で練習するときは、それぞれの役割とやるべきことをあらかじめ決めておきます。
| 役割 | 主な担当内容 |
|---|---|
| 受験者役 | 課題文を読み、説明も動作も省略せずに最初から最後まで通す。途中で詰まっても答えを聞かない。 |
| 患者役 | 設定に沿って受け答えを行い、説明がわかりやすかったか、不安や困った場面がなかったかを後で伝える。 |
| 観察役 | 項目表を確認しながら、動作・声かけ・経過時間を記録する。練習の途中で先回りして教えない。 |
ここで大切なのは、「全員で手順を確認・読み上げる時間」と「一人で通してやってみる時間」をきっちり分けることです。
受験者役が通している最中に、周囲が「次はこれだよ」と助け舟を出してしまうと、本人がどこで思い出せなくなったのかがわからなくなってしまいます。途中でわからなくなっても周囲は口を挟まずに見守り、まずは最後まで続け、終わったあとの振り返りで一緒に確認しましょう。
※もし2人しか集まれない場合は、1人が患者役と観察・振り返りを兼ねる形で進めても問題ありません。「動きが見えにくい課題」だけ後日3人で練習するなど工夫し、人数がそろうのを待って何日も先延ばしにするより、今日できる課題から手を動かしていきましょう。
3. 最初の60分は、一つの領域を3周する
初回の練習から全領域を一気に詰め込もうとすると、消化不良になりがちです。「今日は医療面接」「次回は実習で扱った身体診察」というように、1つの領域に絞って進めるとリズムがつかみやすくなります。
たとえば医療面接をテーマにする場合、以下のスケジュールで進めると、60分で3人全員が受験者役を経験できます。
| 時間配分 | 進め方の目安 |
|---|---|
| 0〜6分 | 使う課題・確認する評価項目・最初の役割を決める |
| 6〜21分 | 1人目:10分で通す → 3分で振り返る → 2分で指摘箇所をやり直す |
| 21〜36分 | 役割を交代して 2人目(同様の流れ) |
| 36〜51分 | 役割を交代して 3人目(同様の流れ) |
| 51〜60分 | 3人共通で詰まった点を資料で再確認し、次回の課題を決める |
CATOの案内(2026年度版)では、医療面接の試験時間は10分、その他の課題は5分と設定されています。面接以外の診察手技などを練習する場合は、通す時間を5分に合わせてスケジュールを調整し、余った時間を苦手な動作の反復練習に充てるとよいでしょう。
なお、本番では自分の時計を持ち込んで確認することはできません。普段の練習でも腕時計を頻繁に見る癖に頼りすぎず、体感として「時間内に一通り終えるペース」をつかんでおくことが役立ちます。
4. 指摘は「雑だった」ではなく「直せる具体的な一場面」にする
練習後の振り返りで「もう少し丁寧なほうがいいかも」といった抽象的な感想を伝えても、言われた側は何をどう改善すればよいか迷ってしまいます。
指摘するときは、以下のように目に見えた具体的な動作へ置き換えて伝えるのがコツです。
- あいまいな指摘:「ちょっと雑だった」
- 具体的な指摘:「次に何をするか説明する前に、いきなり体に触れていた」
- あいまいな指摘:「テンポが悪かった」
- 具体的な指摘:「質問をテンポよく重ねすぎて、患者役が話し終える前に遮ってしまった」
振り返りの順番は、まず受験者役自身が「詰まった点」を1つ挙げ、次に患者役、最後に観察役がそれぞれ1つずつ伝える形がスムーズです。
改善点を10個並べて抱え込むよりも、「直後の2分間で修正できる具体的なポイント」を1〜2個選び、その場で実際にやり直してみることが上達への近道です。
説明が抜けていたなら「次は○○を調べますね」と声かけを挟んでからやり直す。相手の話を遮ってしまったなら、同じ質問の場面に戻って「患者役の返答を最後まで待つ」ところまでを再現してみる。うなずいて終わりにするのではなく、その場で一度身体を動かして修正する癖をつけましょう。
5. 手順の暗記と、相手への説明を切り離さない
緊張が高まると、どうしても頭の中で覚えた手順を順番にこなすことだけに意識が向いてしまいがちです。しかし、患者役の視点から見ると、「次に何をされるのかわからないまま、次々と体を触られたり動かされたりして不安だった」という状態になりかねません。
CATOの案内でも、医療面接に限らずその他の実技課題においてもコミュニケーションを学修することの重要性が示されています。
練習の段階から、「本番なら言うつもり」という言葉を頭の中だけで済ませず、しっかり声に出して練習しましょう。
- 丁寧な自己紹介
- これから行う手技・診察の目的と内容の説明
- 相手の返答や表情、反応を待ってから動作に入ること
これらを一連の動作として通して行うことが大切です。
なお、身体診察などの実技手技は、必ず大学の講義・実習で教わった方法と指定の実習器具を用いて行ってください。侵襲的な手技を友人の身体を使って試すような練習は絶対にやめましょう。
6. 次の練習には「直したい行動」を一つ持っていく
練習が終わったら、メモを残しておきましょう。長文を書く必要はなく、「次回はまず説明を口にしてから触れる」「患者さんが話し終わるまで一呼吸待つ」といった、次回に周囲に見てもらいたい具体的な行動を1つ書くだけで十分です。
次回の練習が始まるときに「今日は前回のこの癖を直すのを意識して通すね」と共有しておけば、同じ注意を何度も繰り返してしまうのを防げます。
まとめ:一人で覚える時間と、3人で合わせる時間を使い分ける
- 一人の時間:教育用動画やCATO・大学の評価項目資料を使って、手順や流れを頭に入れる
- 友人と集まる時間:「受験者役・患者役・観察役」を交代しながら、相手がいるからこそ気づける声かけや間の取り方を実践する
この2つを明確に切り分け、「一人で通す → 具体的につまずいた箇所を一つ直す → その場でもう一度やってみる」というサイクルを60分で回してみてください。手順をなぞるだけでは得られない、実践的な手応えがつかめるはずです。
※2026年9月11日確認。実際の試験形式、実施課題、使用器具等の最新情報は、必ずご自身の所属大学が案内する要項に合わせて確認・調整してください。

