カードの分類と基本方針
A の 4n+1 枚のカードを,値の種類で次の5つに分類する。 I1={1,2,…,n} (n枚,正の実数),I2={−1,−2,…,−n} (n枚,負の実数), I3={i,2i,…,ni} (n枚,正の純虚数),I4={−i,−2i,…,−ni} (n枚,負の純虚数),{0} (1枚). これらは互いに共通部分を持たず,合計 4n+1 枚である。以下 N=4n+1 とおく。
カードを一列に無作為に並べる操作は,A の N 枚を無作為に並べる N! 通りの並べ方がすべて同様に確からしい試行である。このとき,任意に固定した位置の組(例えば左から 1,2,3 番目)に置かれる値の組 (X1,X2,X3) は,A から相異なる 3 個を取り出して並べる N(N−1)(N−2) 通りの組がすべて同様に確からしい。したがって,X1,X2,X3 の値そのもの(順序に依らない対称な条件)だけで決まる事象を考えるときは,「{X1,X2,X3} を A から無作為に選んだ 3 元部分集合とみなしてよい」(2 個の場合も同様)。これを以下で繰り返し用いる。
(1) 積 X1X2X3 が 0 となる確率
A の要素で 0 でないものはすべて(実数でも純虚数でも)0 でない複素数だから,積 X1X2X3=0 となるのは,X1,X2,X3 のうち少なくとも 1 つが 0 のカードであるとき,かつそのときに限る。
0 のカードはちょうど 1 枚であり,並べ方の対称性より,この特定の 1 枚が左から k 番目(k=1,…,N)に来る確率はどの k についても等しく N1 である。「左から 1,2,3 番目のいずれかに来る」という事象は,これらの互いに排反な 3 つの事象の和だから, P(1)=N3=4n+13.
(2) 積 X1X2X3 が実数となる確率
0 でない実数を r,0 でない純虚数を s,t とすると, r⋅r⋅rr⋅s⋅ts⋅s⋅(純虚数) は実数,r⋅r⋅s は0でない純虚数,=r⋅(st) は0でない実数 は0でない純虚数.(st は0でない実数), であることから,X1,X2,X3 に 0 のカードが含まれない場合,積が実数となるのは,3 枚のうち純虚数のカードの枚数が 0 枚または 2 枚のとき(かつそのときに限る)である。また 0 のカードが含まれれば積は 0 で実数である。
0 でない実数のカードは I1∪I2 の 2n 枚,純虚数のカードは I3∪I4 の 2n 枚である。3 枚を選ぶ場合の数の内訳は次のとおり。
・ 0 を含む:残り 2 枚を 0 以外の 4n 枚から選ぶ:(24n) 通り。
・ 0 を含まず,実数 3 枚:(32n) 通り。
・ 0 を含まず,実数 1 枚・純虚数 2 枚:(12n)(22n) 通り。
これらを合計すると (24n)+(32n)+(12n)(22n)=2n(4n−1)+32n(n−1)(2n−1)+2n2(2n−1)=2n(4n−1)(1+32n−1)=34n(n+1)(4n−1). 一方,全体の場合の数は (34n+1)=6(4n+1)(4n)(4n−1)=32n(4n+1)(4n−1) であるから, P(2)=32n(4n+1)(4n−1)34n(n+1)(4n−1)=4n+12(n+1).
(3) 和 X1+X2 が実数となる確率
0 を含む実数値のカード全体(I1∪I2∪{0},2n+1 枚)から 2 枚を選べば,和は実数どうしの和だから常に実数である。
X1,X2 の一方が純虚数でもう一方が実数(0 を含む)であれば,和は虚部が 0 でない(純虚数側が 0 でないため)から実数にならない。
X1,X2 がともに純虚数 ki, k′i(k,k′ は互いに異なる 0 でない整数で ∣k∣,∣k′∣≦n)のとき,和は (k+k′)i であり,これが実数(=0)となるのは k′=−k のとき,かつそのときに限る。I3∪I4 の中でこのような対 {ki,−ki} は k=1,…,n の n 通りある。
よって好都合な場合の数は (22n+1)+n=n(2n+1)+n=2n(n+1) であり,全体は (24n+1)=2(4n+1)(4n)=2n(4n+1) 通りだから, P(3)=2n(4n+1)2n(n+1)=4n+1n+1.
(4) X1(X2+X3) が 0 となる確率
A の要素はすべて有限な複素数で,積が 0 になるのは因数のどちらかが 0 のときに限るから, X1(X2+X3)=0、すなわち X1=0 または X2+X3=0. X2+X3=0 となるのは,(3) と同様の議論により,{X2,X3} が実数の対 {k,−k}(k=1,…,n)または純虚数の対 {ki,−ki}(k=1,…,n)である場合であり,このような対は合わせて 2n 通りある(0 はこの種の対を作れない:カードは 1 枚しかないため)。
事象 E: X1=0,事象 F: X2+X3=0 とおく。並べ方の対称性より P(E)=N1,P(F)=(2N)2n=2N(N−1)2n=N(N−1)4n=N1(∵N=4n+1). E∩F(X1=0 かつ X2+X3=0)については,X1=0 を固定したとき,{X2,X3} は残り 4n 枚(すべて 0 でない)から選ぶ一様な 2 元部分集合であり,好都合な対(実数対 n 通り+純虚数対 n 通り)は 2n 通りだから, P(F∣E)=(24n)2n=24n(4n−1)2n=4n−11,P(E∩F)=P(E)P(F∣E)=N(4n−1)1. 確率の加法定理により P(4)=P(E)+P(F)−P(E∩F)=N2−N(4n−1)1=N(4n−1)2(4n−1)−1=(4n+1)(4n−1)8n−3.
(5) X1(X2+X3) が実数となる確率
複素数 z=X1, w=X2+X3 の積 zw が実数となる条件を,z の型で場合分けする。
・ z=0 のとき:積は 0 で常に実数。
・ z が 0 でない実数のとき:zw は実数、すなわち w は実数(w=0 を含む)。
・ z が 0 でない純虚数のとき:z=ci(c=0)とすると zw=ci⋅w であり,これが実数となるのは w の実部が 0(w が純虚数または 0)のとき,かつそのときに限る。
(i)X1=0(確率 N1):このとき常に好都合。
(ii)X1 が 0 でない実数(確率 N2n)で固定されているとき,残り 4n 枚は「0 のカード 1 枚」「他の 0 でない実数 2n−1 枚」「純虚数 2n 枚」からなる。好都合な {X2,X3}(X2+X3 が実数)は
・ 両方とも実数値カード(0 を含めて 2n 枚):和は常に実数:(22n) 通り。
・ 両方とも純虚数で絶対値が等しく符号が逆(和が 0):純虚数は 2n 枚すべて残っているので n 通り。
(他の組合せは和の虚部が 0 でなく不適。)よって好都合な場合の数は (22n)+n=n(2n−1)+n=2n2 であり,全体は (24n)=2n(4n−1) 通りだから,条件付き確率は 2n(4n−1)2n2=4n−1n。
(iii)X1 が 0 でない純虚数(確率 N2n)で固定されているとき,残り 4n 枚は「0 のカード 1 枚」「実数 2n 枚」「他の純虚数 2n−1 枚」からなる。好都合な {X2,X3}(X2+X3 の実部が 0)は
・ 両方とも純虚数(残り 2n−1 枚から 2 枚):和は常に純虚数(実部 0):(22n−1) 通り。
・ 一方が 0,他方が純虚数の残り:和は純虚数:2n−1 通り。
・ 両方とも実数で絶対値が等しく符号が逆(和が 0):n 通り。
(他の組合せは和の実部が 0 でなく不適。)合計すると (22n−1)+(2n−1)+n=(2n−1)(n−1)+(2n−1)+n=n(2n−1)+n=2n2 であり,(ii) と同じ値になる。条件付き確率も同様に 4n−1n。
以上より P(5)=N1+N2n⋅4n−1n+N2n⋅4n−1n=N1+N(4n−1)4n2=N(4n−1)(4n−1)+4n2=(4n+1)(4n−1)4n2+4n−1.
検算
n=1(A={0,1,−1,i,−i},N=5)のとき,公式は P(1)=53,P(2)=54,P(3)=52,P(4)=31,P(5)=157 を与える。実際に 5 枚から 3 枚((1)(2)),2 枚((3)),あるいは位置を区別した 3 枚の並べ方((4)(5))を全て書き出して数え上げても同じ値が得られる(例えば (2) では,0 を含む組合せ (24)=6 通りに加え,0 を含まない組合せ {1,−1,i},{1,−1,−i},{1,i,−i},{−1,i,−i} のうち後者 2 つ(純虚数がちょうど 2 枚)が実数となり,合計 8 通り/全体 (35)=10 通りで 108=54 と一致する)。また n=2,3 でも同様の数え上げで各式が一致することを確認した。次元・符号についても,n→ 大のとき各確率は0より大きく1より小さい範囲に収まり,(1)<(2)(積が 0 になる事象は実数になる事象の特殊な場合)や (4)<(5) といった包含関係とも整合する。
カードの分類と基本方針
A の 4n+1 枚のカードを,値の種類で次の5つに分類する。 I1={1,2,…,n} (n枚,正の実数),I2={−1,−2,…,−n} (n枚,負の実数), I3={i,2i,…,ni} (n枚,正の純虚数),I4={−i,−2i,…,−ni} (n枚,負の純虚数),{0} (1枚). これらは互いに共通部分を持たず,合計 4n+1 枚である。以下 N=4n+1 とおく。
カードを一列に無作為に並べる操作は,A の N 枚を無作為に並べる N! 通りの並べ方がすべて同様に確からしい試行である。このとき,任意に固定した位置の組(例えば左から 1,2,3 番目)に置かれる値の組 (X1,X2,X3) は,A から相異なる 3 個を取り出して並べる N(N−1)(N−2) 通りの組がすべて同様に確からしい。したがって,X1,X2,X3 の値そのもの(順序に依らない対称な条件)だけで決まる事象を考えるときは,「{X1,X2,X3} を A から無作為に選んだ 3 元部分集合とみなしてよい」(2 個の場合も同様)。これを以下で繰り返し用いる。
(1) 積 X1X2X3 が 0 となる確率
A の要素で 0 でないものはすべて(実数でも純虚数でも)0 でない複素数だから,積 X1X2X3=0 となるのは,X1,X2,X3 のうち少なくとも 1 つが 0 のカードであるとき,かつそのときに限る。
0 のカードはちょうど 1 枚であり,並べ方の対称性より,この特定の 1 枚が左から k 番目(k=1,…,N)に来る確率はどの k についても等しく N1 である。「左から 1,2,3 番目のいずれかに来る」という事象は,これらの互いに排反な 3 つの事象の和だから, P(1)=N3=4n+13.
(2) 積 X1X2X3 が実数となる確率
0 でない実数を r,0 でない純虚数を s,t とすると, r⋅r⋅r は実数,r⋅r⋅s は0でない純虚数,r⋅s⋅t=r⋅(st) は0でない実数 (∵st は0でない実数),s⋅s⋅(純虚数) は0でない純虚数 であることから,X1,X2,X3 に 0 のカードが含まれない場合,積が実数となるのは,3 枚のうち純虚数のカードの枚数が 0 枚または 2 枚のとき(かつそのときに限る)である。また 0 のカードが含まれれば積は 0 で実数である。
0 でない実数のカードは I1∪I2 の 2n 枚,純虚数のカードは I3∪I4 の 2n 枚である。3 枚を選ぶ場合の数の内訳は次のとおり。
・ 0 を含む:残り 2 枚を 0 以外の 4n 枚から選ぶ:(24n) 通り。
・ 0 を含まず,実数 3 枚:(32n) 通り。
・ 0 を含まず,実数 1 枚・純虚数 2 枚:(12n)(22n) 通り。
これらを合計すると (24n)+(32n)+(12n)(22n)=2n(4n−1)+32n(n−1)(2n−1)+2n2(2n−1)=2n(4n−1)(1+32n−1)=34n(n+1)(4n−1). 一方,全体の場合の数は (34n+1)=6(4n+1)(4n)(4n−1)=32n(4n+1)(4n−1) であるから, P(2)=32n(4n+1)(4n−1)34n(n+1)(4n−1)=4n+12(n+1).
(3) 和 X1+X2 が実数となる確率
0 を含む実数値のカード全体(I1∪I2∪{0},2n+1 枚)から 2 枚を選べば,和は実数どうしの和だから常に実数である。
X1,X2 の一方が純虚数でもう一方が実数(0 を含む)であれば,和は虚部が 0 でない(純虚数側が 0 でないため)から実数にならない。
X1,X2 がともに純虚数 ki, k′i(k,k′ は互いに異なる 0 でない整数で ∣k∣,∣k′∣≦n)のとき,和は (k+k′)i であり,これが実数(=0)となるのは k′=−k のとき,かつそのときに限る。I3∪I4 の中でこのような対 {ki,−ki} は k=1,…,n の n 通りある。
よって好都合な場合の数は (22n+1)+n=n(2n+1)+n=2n(n+1) であり,全体は (24n+1)=2(4n+1)(4n)=2n(4n+1) 通りだから, P(3)=2n(4n+1)2n(n+1)=4n+1n+1.
(4) X1(X2+X3) が 0 となる確率
A の要素はすべて有限な複素数で,積が 0 になるのは因数のどちらかが 0 のときに限るから, X1(X2+X3)=0、すなわち X1=0 または X2+X3=0. X2+X3=0 となるのは,(3) と同様の議論により,{X2,X3} が実数の対 {k,−k}(k=1,…,n)または純虚数の対 {ki,−ki}(k=1,…,n)である場合であり,このような対は合わせて 2n 通りある(0 はこの種の対を作れない:カードは 1 枚しかないため)。
事象 E: X1=0,事象 F: X2+X3=0 とおく。並べ方の対称性より P(E)=N1,P(F)=(2N)2n=2N(N−1)2n=N(N−1)4n=N1(∵N=4n+1). E∩F(X1=0 かつ X2+X3=0)については,X1=0 を固定したとき,{X2,X3} は残り 4n 枚(すべて 0 でない)から選ぶ一様な 2 元部分集合であり,好都合な対(実数対 n 通り+純虚数対 n 通り)は 2n 通りだから, P(F∣E)=(24n)2n=24n(4n−1)2n=4n−11,P(E∩F)=P(E)P(F∣E)=N(4n−1)1. 確率の加法定理により P(4)=P(E)+P(F)−P(E∩F)=N2−N(4n−1)1=N(4n−1)2(4n−1)−1=(4n+1)(4n−1)8n−3.
(5) X1(X2+X3) が実数となる確率
複素数 z=X1, w=X2+X3 の積 zw が実数となる条件を,z の型で場合分けする。
・ z=0 のとき:積は 0 で常に実数。
・ z が 0 でない実数のとき:zw は実数、すなわち w は実数(w=0 を含む)。
・ z が 0 でない純虚数のとき:z=ci(c=0)とすると zw=ci⋅w であり,これが実数となるのは w の実部が 0(w が純虚数または 0)のとき,かつそのときに限る。
(i)X1=0(確率 N1):このとき常に好都合。
(ii)X1 が 0 でない実数(確率 N2n)で固定されているとき,残り 4n 枚は「0 のカード 1 枚」「他の 0 でない実数 2n−1 枚」「純虚数 2n 枚」からなる。好都合な {X2,X3}(X2+X3 が実数)は
・ 両方とも実数値カード(0 を含めて 2n 枚):和は常に実数:(22n) 通り。
・ 両方とも純虚数で絶対値が等しく符号が逆(和が 0):純虚数は 2n 枚すべて残っているので n 通り。
(他の組合せは和の虚部が 0 でなく不適。)よって好都合な場合の数は (22n)+n=n(2n−1)+n=2n2 であり,全体は (24n)=2n(4n−1) 通りだから,条件付き確率は 2n(4n−1)2n2=4n−1n。
(iii)X1 が 0 でない純虚数(確率 N2n)で固定されているとき,残り 4n 枚は「0 のカード 1 枚」「実数 2n 枚」「他の純虚数 2n−1 枚」からなる。好都合な {X2,X3}(X2+X3 の実部が 0)は
・ 両方とも純虚数(残り 2n−1 枚から 2 枚):和は常に純虚数(実部 0):(22n−1) 通り。
・ 一方が 0,他方が純虚数の残り:和は純虚数:2n−1 通り。
・ 両方とも実数で絶対値が等しく符号が逆(和が 0):n 通り。
(他の組合せは和の実部が 0 でなく不適。)合計すると (22n−1)+(2n−1)+n=(2n−1)(n−1)+(2n−1)+n=n(2n−1)+n=2n2 であり,(ii) と同じ値になる。条件付き確率も同様に 4n−1n。
以上より P(5)=N1+N2n⋅4n−1n+N2n⋅4n−1n=N1+N(4n−1)4n2=N(4n−1)(4n−1)+4n2=(4n+1)(4n−1)4n2+4n−1.
検算
n=1(A={0,1,−1,i,−i},N=5)のとき,公式は P(1)=53,P(2)=54,P(3)=52,P(4)=31,P(5)=157 を与える。実際に 5 枚から 3 枚((1)(2)),2 枚((3)),あるいは位置を区別した 3 枚の並べ方((4)(5))を全て書き出して数え上げても同じ値が得られる(例えば (2) では,0 を含む組合せ (24)=6 通りに加え,0 を含まない組合せ {1,−1,i},{1,−1,−i},{1,i,−i},{−1,i,−i} のうち後者 2 つ(純虚数がちょうど 2 枚)が実数となり,合計 8 通り/全体 (35)=10 通りで 108=54 と一致する)。また n=2,3 でも同様の数え上げで各式が一致することを確認した。次元・符号についても,n→ 大のとき各確率は0より大きく1より小さい範囲に収まり,(1)<(2)(積が 0 になる事象は実数になる事象の特殊な場合)や (4)<(5) といった包含関係とも整合する。