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慶應義塾大学 2000年 数学 第III問解答・解説

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1問題

慶應義塾大学2000年度第III問

設問(1)、(2)では文章の空欄に適当な数または式を入れて文章を完成しなさい。解答は解答用紙の所定の解答欄に記入しなさい。設問(3)の解答は解答欄の所定の場所に記入しなさい。

2次元の列ベクトル(2行1列の行列) x=(st)\boldsymbol{x}=\begin{pmatrix}s\\t\end{pmatrix} に対し、ℓ(x)=s2+t2\ell(\boldsymbol{x})=\sqrt{s^{2}+t^{2}} と定義し、 S={x∣ℓ(x)=1}S=\{\boldsymbol{x}\mid\ell(\boldsymbol{x})=1\} とおく。また、2行2列の行列 AA に対し、x\boldsymbol{x} が SS を動いたときの ℓ(Ax)\ell(A\boldsymbol{x}) の最大値を m(A)m(A) と定義する。

(1) 0<a<b0<a<b、 A=(a00b),x=(st)∈S,m(A)=ℓ(Ax)A=\begin{pmatrix}a&0\\0&b\end{pmatrix},\qquad \boldsymbol{x}=\begin{pmatrix}s\\t\end{pmatrix}\in S,\qquad m(A)=\ell(A\boldsymbol{x}) ならば、s2=あs^{2}=\boxed{\text{あ}}、t2=いt^{2}=\boxed{\text{い}} で、m(A)=うm(A)=\boxed{\text{う}} である。

(2) A=(231023),x=(st)∈S,m(A)=ℓ(Ax)\displaystyle A=\begin{pmatrix}\frac{2}{3}&1\\0&\frac{2}{3}\end{pmatrix},\qquad \boldsymbol{x}=\begin{pmatrix}s\\t\end{pmatrix}\in S,\qquad m(A)=\ell(A\boldsymbol{x}) ならば、s2=えs^{2}=\boxed{\text{え}}、t2=おt^{2}=\boxed{\text{お}} で、m(A)=かm(A)=\boxed{\text{か}} である。

(3) 「a,b,c≧0a,b,c\geqq0、 A=(ac0b)A=\begin{pmatrix}a&c\\0&b\end{pmatrix} ならば m(A2)=m(A)2m(A^{2})=m(A)^{2} が成り立つ」という命題は正しいか。正しければ証明し、正しくないならば成り立たない例を1つ示し、成り立たない理由を述べなさい。

まずは自分で解いてみましょう。詰まったら「考え方」、解けたら「答え」で確かめられます。

2答え

答えを見る自分の答えと照らし合わせる
  • (1)
    s2=0,t2=1,m(A)=bs^2=0,t^2=1,m(A)=b
  • (2)
    s2=15,t2=45,m(A)=43\displaystyle s^2=\frac15,\quad t^2=\frac45,\quad m(A)=\frac43。
  • (3)
    誤り。A=(1101)A=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix} で m(A2)=1+2≠3+52=m(A)2\displaystyle m(A^2)=1+\sqrt2\ne\frac{3+\sqrt5}{2}=m(A)^2。

3解答

解答を見る途中式つきの解答

(1) s2+t2=1s^2+t^2=1 なので ℓ(Ax)2=a2s2+b2t2≦b2(s2+t2)=b2.\ell(A\boldsymbol{x})^2=a^2s^2+b^2t^2\le b^2(s^2+t^2)=b^2. a<ba<b より等号は s=0,t2=1s=0,t^2=1 のときに限る。従って s2=0,t2=1,m(A)=bs^2=0,t^2=1,m(A)=b。

(2) この行列では ℓ(Ax)2=(23s+t)2+(23t)2=19(s2+t2)+13(s+2t)2.\displaystyle \ell(A\boldsymbol{x})^2=(\frac23s+t)^2+(\frac23t)^2 =\frac19(s^2+t^2)+\frac13(s+2t)^2. 5(s2+t2)−(s+2t)2=(2s−t)2≧05(s^2+t^2)-(s+2t)^2=(2s-t)^2\ge0 と s2+t2=1s^2+t^2=1 より (s+2t)2≦5(s+2t)^2\le5 で、等号は (s,t)(s,t) が (1,2)(1,2) に比例するときに成り立つ。従って最大値の二乗は 19+53=169\displaystyle \frac19+\frac53=\frac{16}{9}、最大化する単位ベクトルは符号を除き (15,25)\displaystyle (\frac1{\sqrt5},\frac2{\sqrt5})。よって s2=15,t2=45,m(A)=43\displaystyle s^2=\frac15,t^2=\frac45,m(A)=\frac43。

(3) 命題は正しくない。a=b=c=1a=b=c=1 として A=(1101)A=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix} を取る。単位ベクトル (s,t)(s,t) に対して ℓ(Ax)2=s2+2st+2t2.\ell(A\boldsymbol{x})^2=s^2+2st+2t^2. λ=3+52\displaystyle \lambda=\frac{3+\sqrt5}{2} とおくと (λ−1)(λ−2)=1(\lambda-1)(\lambda-2)=1 より λ(s2+t2)−ℓ(Ax)2=((λ−1)s−t)2λ−1≧0,\displaystyle \lambda(s^2+t^2)-\ell(A\boldsymbol{x})^2=\frac{((\lambda-1)s-t)^2}{\lambda-1}\ge0, 等号を満たす単位ベクトルも存在する。従って m(A)2=λ=3+52\displaystyle m(A)^2=\lambda=\frac{3+\sqrt5}{2}。一方、A2=(1201)A^2=\begin{pmatrix}1&2\\0&1\end{pmatrix}。μ=3+22\mu=3+2\sqrt2 とすると μ−5=4/(μ−1)\mu-5=4/(\mu-1) なので μ(s2+t2)−ℓ(A2x)2=((μ−1)s−2t)2μ−1≧0,\displaystyle \mu(s^2+t^2)-\ell(A^2\boldsymbol{x})^2=\frac{((\mu-1)s-2t)^2}{\mu-1}\ge0, ここでも等号を満たす単位ベクトルがある。よって m(A2)=μ=1+2m(A^2)=\sqrt\mu=1+\sqrt2。これは m(A)2=(3+5)/2m(A)^2=(3+\sqrt5)/2 と異なるため、反例となる。

定義通り単位円上で二乗ノルムを最大化する。(1)では大きい対角成分の軸で最大になる。(2)では二次式を平方和に分けて最大値と等号条件を求める。(3)も同様に二つの具体的な二次式の最大を計算し、両辺が異なる例を示す。

この問題で使う考え方

  • 平方和による上界
  • コーシー・シュワルツ
  • 等号条件
  • 反例構成

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