【用語の解釈】原文の「自然数 n」は n≧1 と解釈します。0を含む定義では、小問(1)に n=0 の場合(aはすべての実数)が加わるため、以下は正の自然数についての解説です。
実数 a と自然数 n に対して,x の方程式 a(x2+∣x+1∣+n−1)=n(x+1)(∗) を考える。
{ 準備(置き換え)}
t=x+1 とおくと x=t−1 であり, x2+∣x+1∣+n−1=(t−1)2+∣t∣+n−1=t2−2t+∣t∣+n であるから,(∗) は t の方程式 a(t2−2t+∣t∣+n)=nt(∗∗) と同値になる(x と t=x+1 は 1 対 1 に対応するので,(∗) が実数解を持つことと (∗∗) が実数解を持つことは同値)。
t≧0 のとき ∣t∣=t より t2−2t+∣t∣+n=t2−t+n=:D1(t), t<0 のとき ∣t∣=−t より t2−2t+∣t∣+n=t2−3t+n=:D2(t) である。
{ D1,D2 の正値性}
n≧1 より D1(t)=t2−t+n=(t−21)2+n−41 ≧ n−41 ≧ 43 >0 がすべての実数 t で成り立つ。また t<0 のとき,t2≧0, −3t>0, n>0 よりその和である D2(t)=t2−3t+n>0 も成り立つ。したがって (∗∗) は次の 2 つの場合に分けて,両辺を正の量 D1,D2 で割ることができる。
・ t≧0 のとき:a=h1(t):=t2−t+nnt
・ t<0 のとき:a=h2(t):=t2−3t+nnt
すなわち,(∗) が実数解を持つための条件は a が、t≧0 における h1(t) または t<0 における h2(t) の値として得られること である。以下この 2 つの値域を求める。
{ h1 の値域(t≧0)}
t=0 のとき h1(0)=0。t>0 のときは分母・分子を t で割って h1(t)=t+tn−1n. t>0, tn>0 に対し相加平均・相乗平均の関係より t+tn ≧ 2t⋅tn=2n であり,等号は t=tn すなわち t=n(t>0 の範囲にあり適する)のとき成り立つ。また t→0+ または t→∞ のとき t+tn→∞ であり,t+tn は連続関数だから中間値の定理により,t>0 の範囲で t+tn は 2n 以上のすべての値を取る。よって t+tn−1≧2n−1 であり(2n−1≧1>0 なので常に正),h1(t)=n/(t+n/t−1) は t>0 の範囲で最大値 M1:=2n−1n(t=n で達成) を取り,t→0+ または t→∞ で 0 に近づく(0 自身は t>0 では取らない)。h1 は連続で h1(0)=0, h1(n)=M1, h1(t)→0(t→∞) となるから,中間値の定理より 0≦h1(t)≦M1(t≧0),この範囲のすべての値をとる.
{ h2 の値域(t<0)}
s=−t>0 とおくと h2(t)=s2+3s+nn(−s)=−s2+3s+nns=−k(s),k(s):=s+3+snn (s>0). 同様に相加・相乗平均より s+sn≧2n(等号は s=n),かつ s→0+ または s→∞ で s+sn→∞ であるから,中間値の定理より s+sn は 2n 以上のすべての値を取り, s+3+sn≧2n+3. ゆえに k(s) は s=n で最大値 M2:=2n+3n を取り,s→0+ または s→∞ で 0 に近づく(s>0 なので 0 には達しない)。k は連続で k(n)=M2>0 であり,s→0+,∞ で 0 に近づくから,中間値の定理より s>0 における k(s) の値域は 0<k(s)≦M2。よって −M2≦h2(t)<0(t<0),この範囲のすべての値をとる.
{ (1) の結論}
以上より,(∗) が実数解を持つための a の範囲は 0≦a≦M1 または −M2≦a<0,すなわち −M2≦a≦M1 すなわち −2n+3n ≦ a ≦ 2n−1n である。
(検算)n=1 のとき M1=1, M2=51。a=1 のとき t=1=1(x=0)を代入すると,(∗) 左辺 =1⋅(0+1+0)=1,右辺 =1⋅1=1 で一致。a=−51 のとき t=−1(x=−2)を代入すると,左辺 =−51⋅(4+1+0)=−1,右辺 =1⋅(−1)=−1 で一致する。
{ (2) すべての自然数 n に対して実数解を持つ a}
(1) より,各自然数 n に対して (∗) が実数解を持つ条件は −M2(n)≦a≦M1(n),ただし M1(n)=2n−1n,M2(n)=2n+3n. すべての自然数 n に対してこれが成り立つための条件は −M2(n)≦a≦M1(n)がすべての自然数 n について成り立つこと である。u=n (u≧1) とおくと M1(n)−21=2u−1u−21=2(2u−1)2u−(2u−1)=2(2u−1)1 >0, 21−M2(n)=21−2u+3u=2(2u+3)2u+3−2u=2(2u+3)3 >0 であるから,つねに M2(n)<21<M1(n) である。
さらに u=n は n の増加関数であり,2(2u−1)1 は u の減少関数だから M1(n) は n について単調減少で,n→∞(u→∞)のとき M1(n)→21(下から近づかず上から近づく:M1(n)>21 を保ったまま単調減少)。ゆえに すべての自然数 n で a≦M1(n) となる条件は a≦21 であり(どの有限の n でも達成されないが,a≦21 ならばすべての n で a≦21<M1(n) が成り立ち,逆に a>21 なら M1(n)→21 よりある十分大きな n で M1(n)<a となって条件が破れるので,境界 a=21 を含めてよい),上限の条件は a≦21.
一方,2(2u+3)3 は u の減少関数だから M2(n) は n について単調増加で,最小値は n=1(u=1)のとき M2(1)=2⋅1+31=51 で実際に達成される。ゆえに 自然数 n に対する M2(n) の最小値は M2(1)=51 であり,下限の条件は a≧−51.
以上をあわせて,すべての自然数 n に対して (∗) が実数解を持つための a の範囲は −51 ≦ a ≦ 21 である。
(検算)n=1 で境界 a=−51, 21 が実際に等号達成点であることは (1) の検算で確認済み。a=21 のとき,任意の n に対し t=n(x=n−1)を代入すると,D1(n)=n−n+n=2n−n であり,左辺 =21(2n−n)=n−2n。右辺 =n⋅n=n。両者は n が大きいほど比の上で近づくが厳密には一致しない(a=1/2 は M1(n) の下限であって t=n での値そのものではない)ので,この t は等号達成点ではなく,(∗) の解 t は n ごとに異なる点で存在する(a=1/2<M1(n) なので (1) の結論により解の存在自体は保証される)。