A=(abbc),u=(p,q),v=(r,s) は p2+q2=1,r2+s2=1, ap+bq=αp,bp+cq=αq(i, ii) ar+bs=βr,br+cs=βs(iii, iv) を満たし,α=β とする。以下,(i)〜(iv) はすべて成分ごとのスカラーの等式であり,行列やベクトルの記号はこれらの等式を簡潔にまとめた表記として用いる。
(1) u⊥v の証明
(i)の両辺に r,(ii)の両辺に s を掛けて辺々加えると r(ap+bq)+s(bp+cq)=α(pr+qs), すなわち apr+bqr+bps+csq=α(pr+qs).(A) 一方,(iii)の両辺に p,(iv)の両辺に q を掛けて辺々加えると p(ar+bs)+q(br+cs)=β(pr+qs), すなわち apr+bps+bqr+csq=β(pr+qs).(B) (A)の左辺と(B)の左辺はどちらも apr+bqr+bps+csq であり(加法の順序を入れ替えただけ)まったく同じ式であるから,(A),(B)より α(pr+qs)=β(pr+qs),(α−β)(pr+qs)=0. 仮定より α=β であるから pr+qs=0. ここで u⋅v=pr+qs であり,∣u∣=∣v∣=1=0 より u,v はいずれも零ベクトルではないから,内積が 0 であることは u と v のなす角が 90∘ であることを意味する。よって u⊥v.■
(2) X が逆行列をもつことの証明
Δ=ps−qr とおく。任意の実数 p,q,r,s について,右辺を展開して整理すると得られる恒等式 (ps−qr)2=(p2+q2)(r2+s2)−(pr+qs)2 が成り立つ。ここに p2+q2=1,r2+s2=1,(1)で示した pr+qs=0 を代入すると Δ2=(ps−qr)2=1⋅1−02=1. よって Δ=ps−qr=±1 であり,特に Δ=0。
そこで Y=Δ1(s−q−rp) とおき,X=(pqrs) との積を成分ごとに直接計算すると XY=Δ1(pqrs)(s−q−rp)=Δ1(ps−rqqs−sq−pr+rp−qr+sp)=Δ1(Δ00Δ)=(1001), YX=Δ1(s−q−rp)(pqrs)=Δ1(sp−rq−qp+pqsr−rs−qr+ps)=Δ1(Δ00Δ)=(1001). したがって XY=YX=(1001) となる Y が具体的に存在するので,X は逆行列 X−1=Y=ps−qr1(s−q−rp) をもつ。 ■
(3) AX=X(α00β) の証明
定義どおりに成分計算すると AX=(abbc)(pqrs)=(ap+bqbp+cqar+bsbr+cs). (i),(ii),(iii),(iv)より,この4成分はそれぞれ αp, βr, αq, βs に置き換えられるので AX=(αpαqβrβs). 一方 X(α00β)=(pqrs)(α00β)=(pαqαrβsβ)=(αpαqβrβs). 両辺の対応する成分がすべて一致するので AX=X(α00β).■
(4) fn+kn を求める
以後 D=(α00β),Δ=ps−qr と書く。(3)の等式 AX=XD の両辺に右から (2)で存在を示した X−1 を掛けると AXX−1=XDX−1 より A=XDX−1 (XX−1=(1001) であり,これを右から掛けても値は変わらない)。
まず,対角行列の冪について,D1=D=(α00β) であり,Dm=(αm00βm) が成り立つならば Dm+1=DmD=(αm00βm)(α00β)=(αm+100βm+1) となるので,数学的帰納法より,すべての自然数 n で Dn=(αn00βn) が成り立つ。
次に,An=XDnX−1(すべての自然数 n について)を数学的帰納法で示す。
n=1 のとき,上で示した A=XDX−1 がそのまま成り立つ。
n=m で Am=XDmX−1 が成り立つと仮定すると, Am+1=A⋅Am=(XDX−1)(XDmX−1)=XD(X−1X)DmX−1=XD(1001)DmX−1=XDm+1X−1 (X−1X=(1001) であり,これを掛けても値は変わらないこと,および DDm=Dm+1 を用いた)。
したがって数学的帰納法により,すべての自然数 n について An=XDnX−1 が成り立つ。
最後に An=(fnhngnkn) の fn,kn を成分計算する。まず XDn=(pqrs)(αn00βn)=(pαnqαnrβnsβn). これに X−1=Δ1(s−q−rp) を右から掛けると,左上成分と右下成分はそれぞれ fn=Δ1(pαn⋅s+rβn⋅(−q))=Δ1(psαn−qrβn), kn=Δ1(qαn⋅(−r)+sβn⋅p)=Δ1(psβn−qrαn) となる。よって fn+kn=Δ1(psαn−qrβn+psβn−qrαn)=Δ1(ps−qr)(αn+βn)=ΔΔ(αn+βn)=αn+βn. (Δ=±1 のどちらであっても Δ/Δ=1 なので,符号の場合分けは結果に影響しない。)
fn+kn=αn+βn
検算 A=(2112) とすると、問題の条件を満たす値は α=3, β=1(u=(1/2,1/2),v=(1/2,−1/2) はいずれも単位ベクトルで直交し,題意の等式を満たす)。実際に A2=(5445) であり f2+k2=10,一方 α2+β2=9+1=10 で一致する。n=1 でも f1+k1=2+2=4=3+1=α+β で一致し,結果の妥当性を確認した。