以下、A は実成分の2次正方行列とする。行列多項式を成分ごとに展開すれば (A−tE)(A2+tA+t2E)=A3+tA2+t2A−tA2−t2A−t3E=(1−t3)E. 逆順の積も同じ展開で (1−t3)E となる。
(1) (A−tE)(A2+tA+t2E)=(1−t3)E.
(2) t=1 で 1−t3=(1−t)(1+t+t2),1+t+t2=(t+21)2+43>0. ゆえに 1−t3=0。両順序の積から (A−tE)−1=1−t3A2+tA+t2E.
(3)(i) A=E なら A2+A+E=3E=O。
(3)(ii) t=1 とすると (A−E)(A2+A+E)=O。もし A−E が可逆なら、左からその逆行列を掛けて A2+A+E=O を得る。これは仮定に反するので、A−E は可逆でない。
(3)(iii) A=(acbd)、δ=ad−bc、τ=a+d とおく。2次行列の積公式は成分展開から det((prqs)(uwvz))=(pu+qw)(rv+sz)−(pv+qz)(ru+sw)=(ps−qr)(uz−vw) となる。従って A3=E から δ3=1。δ は実数なので δ=1。また、2次行列は行列式が0の場合に限り逆行列をもたないから、A−E が可逆でないとき 0=det(A−E)=ad−bc−a−d+1=δ−τ+1, すなわち τ=2。さらに成分積を計算すると A2−τA+δE=(a2+bc−(a+d)a+(ad−bc)c(a+d)−(a+d)cb(a+d)−(a+d)bd2+bc−(a+d)d+(ad−bc))=O. τ=2,δ=1 を代入すれば (A−E)2=O。B=A−E とおくと、成分積で A3=(E+B)3=E+3B+3B2+B3=E+3B. A3=E より 3B=O、したがって B=O、つまり A=E。固有値や対角化は用いていない。
分類・原本状態 単元:2次正方行列の積・逆行列・行列式。方法:行列多項式の積和、2次行列の成分恒等式。テーマ:A3=E と A−E の可逆性。
係数体の留保 原文は行列成分の係数体を明記しないため、通常の高校数学に従い実行列と解釈した。複素成分まで許すなら命題(3)(iii)は偽で、A=diag(1,ω)(ω3=1,ω=1)が反例となる。