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九州大学/2013年度/前期

九州大学 2013年 数学 第5問解答・解説

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1問題

九州大学2013年度第5問配点 50点

この問題の解答は,解答紙19の定められた場所に記入しなさい。   [問題] 実数 x,y,tx,y,t に対して,行列 A=(xy−t−x−x),B=(54−6−5)A=\begin{pmatrix}x&y\\-t-x&-x\end{pmatrix},\qquad B=\begin{pmatrix}5&4\\-6&-5\end{pmatrix} を考える。(AB)2(AB)^{2} が対角行列,すなわち (α00β)\begin{pmatrix}\alpha&0\\0&\beta\end{pmatrix} の形の行列であるとする。   (1) 命題「3x−3y−2t≠0⟹A=tB3x-3y-2t\neq 0\Longrightarrow A=tB」を証明せよ。   以下(2),(3),(4)では,さらに A2≠EA^{2}\neq E かつ A4=EA^{4}=E であるとする。ただし,EE は単位行列を表す。   (2) 3x−3y−2t=03x-3y-2t=0 を示せ。   (3) xx と yy をそれぞれ tt の式で表せ。   (4) x,y,tx,y,t が整数のとき,行列 AA を求めよ。

まずは自分で解いてみましょう。詰まったら「考え方」、解けたら「答え」で確かめられます。

2考え方

考え方を見る解き方の方針だけを確かめる

AB, (AB)^2 を直接成分計算し、(AB)^2 が対角行列であるという全体の仮定を 「AB の (1,1) 成分と (2,2) 成分の和 p+s=2(3x-3y-2t) が0」または「非対角成分に現れる q,r が0」という条件に帰着させる。(1) はこの条件分岐から A=tB を導く直接証明。(2) は(1)を用いた背理法(B^2=E, A=tBならA^{2n}=t^{2n}Eという性質を利用)。(3) は A の対角成分の和が恒等的に0であることから A^2 が常にスカラー行列 kE になるという構造を用い、A^2≠\neq E, A4=EA^4=E から k=-1 を得て、(2)の関係式と連立して x,y を t の式で表す。(4) は得られた分数式 x=2t+3/t, y=(4/3)t+3/t の整数性から t の約数条件で候補を絞り、全数チェックする。

3答え

答えを見る自分の答えと照らし合わせる
  • (1)(1)\quad 命題は真である(証明は本文参照)。
    (2)3x−3y−2t=0.(2)\quad 3x-3y-2t=0.
    (3)x=2t+3t,y=43t+3t(t≠0, t∈R).\displaystyle (3)\quad x=2t+\dfrac{3}{t},\qquad y=\dfrac{4}{3}t+\dfrac{3}{t}\qquad(t\neq 0,\space{}t\in\mathbb{R}).
    (4)(x,y,t)=(7,5,3) (4)\quad (x,y,t)=(7,5,3)\space{} のとき A=(75−10−7),(x,y,t)=(−7,−5,−3) \space{}A=\begin{pmatrix}7&5\\-10&-7\end{pmatrix},\qquad (x,y,t)=(-7,-5,-3)\space{} のとき A=(−7−5107).\space{}A=\begin{pmatrix}-7&-5\\10&7\end{pmatrix}.

4解答

解答を見る途中式つきの解答

準備(ABAB と (AB)2(AB)^2 の計算)

A=(xy−t−x−x),B=(54−6−5)A=\begin{pmatrix}x&y\\-t-x&-x\end{pmatrix},\qquad B=\begin{pmatrix}5&4\\-6&-5\end{pmatrix} であるから, AB=(5x−6y4x−5yx−5tx−4t)AB=\begin{pmatrix} 5x-6y & 4x-5y\\ x-5t & x-4t \end{pmatrix} となる。AB=(pqrs)AB=\begin{pmatrix}p&q\\r&s\end{pmatrix}(p=5x−6y, q=4x−5y, r=x−5t, s=x−4tp=5x-6y,\ q=4x-5y,\ r=x-5t,\ s=x-4t)とおくと, (AB)2=(p2+qrq(p+s)r(p+s)rq+s2)(AB)^2=\begin{pmatrix}p^2+qr & q(p+s)\\ r(p+s) & rq+s^2\end{pmatrix} であるから,(AB)2(AB)^2 が対角行列であることは q(p+s)=0かつr(p+s)=0(∗)q(p+s)=0\quad\text{かつ}\quad r(p+s)=0 \tag{$\ast$} と同値である。ここで p+s=(5x−6y)+(x−4t)=6x−6y−4t=2(3x−3y−2t)p+s=(5x-6y)+(x-4t)=6x-6y-4t=2(3x-3y-2t) であるから,p+s=0p+s=0 は 3x−3y−2t=03x-3y-2t=0 と同値である。以下,この事実を用いる。

(1) の証明

3x−3y−2t≠03x-3y-2t\neq 0,すなわち p+s≠0p+s\neq 0 と仮定する。このとき(∗\ast)より q=4x−5y=0,r=x−5t=0q=4x-5y=0,\qquad r=x-5t=0 が必要である。r=0r=0 より x=5tx=5t。これを q=0q=0 に代入すると 4(5t)−5y=0よりy=4t.4(5t)-5y=0 \quad\text{より}\quad y=4t. よって A=(5t4t−t−5t−5t)=(5t4t−6t−5t)=t(54−6−5)=tB.A=\begin{pmatrix}5t & 4t\\ -t-5t & -5t\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}5t & 4t\\ -6t & -5t\end{pmatrix} =t\begin{pmatrix}5&4\\-6&-5\end{pmatrix}=tB. したがって「3x−3y−2t≠0⟹A=tB3x-3y-2t\neq 0\Longrightarrow A=tB」が示された。■

(2) の証明

以下,A2≠EA^2\neq E かつ A4=EA^4=E とする。まず B2=(54−6−5)(54−6−5)=(25−2420−20−30+30−24+25)=(1001)=EB^2=\begin{pmatrix}5&4\\-6&-5\end{pmatrix}\begin{pmatrix}5&4\\-6&-5\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}25-24 & 20-20\\ -30+30 & -24+25\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}=E であることに注意する。

背理法で示す。3x−3y−2t≠03x-3y-2t\neq 0 と仮定すると,(1)より A=tBA=tB である。このとき A2=t2B2=t2E.A^2=t^2B^2=t^2E. A2≠EA^2\neq E であるから t2≠1t^2\neq 1 ……①。 一方 A4=(A2)2=(t2E)2=t4EA^4=(A^2)^2=(t^2E)^2=t^4E であり,A4=EA^4=E であるから t4=1t^4=1。 tt は実数だから t2≧0t^2\ge 0 であり,t4=(t2)2=1t^4=(t^2)^2=1 より t2=1t^2=1 ……②。 ①と②は矛盾する。

よって仮定は誤りであり,3x−3y−2t=03x-3y-2t=0 が成り立つ。■

(3) の解答

A=(xy−t−x−x)A=\begin{pmatrix}x&y\\-t-x&-x\end{pmatrix} の対角成分の和((1,1)(1,1)成分と(2,2)(2,2)成分の和)は x+(−x)=0x+(-x)=0 である。一般に 22次正方行列 (abcd)\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix} で a+d=0a+d=0(d=−ad=-a)のとき, (abc−a)2=(a2+bcab−abca−accb+a2)=(a2+bc00a2+bc)=(a2+bc)E\begin{pmatrix}a&b\\c&-a\end{pmatrix}^2 =\begin{pmatrix}a^2+bc & ab-ab\\ ca-ac & cb+a^2\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}a^2+bc & 0\\ 0 & a^2+bc\end{pmatrix} =(a^2+bc)E となり,自動的にスカラー行列になる。AA にこれを適用すると(a=x, b=y, c=−t−xa=x,\ b=y,\ c=-t-x), A2=kE,k=x2+y(−t−x)=x2−xy−ty.A^2=k E,\qquad k=x^2+y(-t-x)=x^2-xy-ty. A4=(A2)2=k2EA^4=(A^2)^2=k^2E である。 A2≠EA^2\neq E より k≠1k\neq 1。A4=EA^4=E より k2=1k^2=1,すなわち k=1k=1 または k=−1k=-1。 k≠1k\neq 1 と合わせて k=x2−xy−ty=−1.(†)k=x^2-xy-ty=-1. \tag{$\dagger$}

(2)の結果 3x−3y−2t=03x-3y-2t=0 より y=x−23t.(‡)\displaystyle y=x-\frac{2}{3}t. \tag{$\ddagger$} (‡\ddagger) を (†\dagger) に代入する。 y(x+t)=(x−23t)(x+t)=x2+xt−23tx−23t2.\displaystyle y(x+t)=\left(x-\frac{2}{3}t\right)(x+t)=x^2+xt-\frac{2}{3}tx-\frac{2}{3}t^2. よって k=x2−y(x+t)=x2−(x2+xt−23tx−23t2)=−13tx+23t2.\displaystyle k=x^2-y(x+t)=x^2-\left(x^2+xt-\frac{2}{3}tx-\frac{2}{3}t^2\right) =-\frac{1}{3}tx+\frac{2}{3}t^2. (†\dagger)より k=−1k=-1 であるから, −13tx+23t2=−1より−tx+2t2=−3よりtx=2t2+3.\displaystyle -\frac{1}{3}tx+\frac{2}{3}t^2=-1 \quad\text{より}\quad -tx+2t^2=-3 \quad\text{より}\quad tx=2t^2+3. もし t=0t=0 なら,この式は 0=30=3 となり矛盾するので t≠0t\neq 0 である(このとき(‡\ddagger)より y=xy=x となり,k=x2−x⋅x−0=0≠−1k=x^2-x\cdot x-0=0\neq -1 となることからも t=0t=0 は不適と分かる)。 t≠0t\neq 0 のとき x=2t2+3t=2t+3t.\displaystyle x=\frac{2t^2+3}{t}=2t+\frac{3}{t}. これを (‡\ddagger) に代入して y=x−23t=2t+3t−23t=43t+3t.\displaystyle y=x-\frac{2}{3}t=2t+\frac{3}{t}-\frac{2}{3}t=\frac{4}{3}t+\frac{3}{t}.

(検算:x=2t+3t, y=43t+3t\displaystyle x=2t+\dfrac3t,\ y=\dfrac43t+\dfrac3t を x2−xy−tyx^2-xy-ty に代入すると,t2t^2 の項・定数項・1/t21/t^2 の項がすべて打ち消し合い,x2−xy−ty=−1x^2-xy-ty=-1 となることが直接展開で確認できる。)

したがって x=2t+3t,y=43t+3t(t≠0, t は実数).\displaystyle x=2t+\frac{3}{t},\qquad y=\frac{4}{3}t+\frac{3}{t}\qquad(t\neq 0,\ t\ \text{は実数}).

(4) の解答

(3)の結果と x,y,tx,y,t が整数であることを用いる。tt は 00 でない整数。 x=2t+3t\displaystyle x=2t+\frac{3}{t} が整数であるためには,2t2t は整数だから 3t\displaystyle \dfrac{3}{t} が整数であることが必要十分,すなわち tt は 33 の約数である。よって t=1,−1,3,−3 のいずれか.t=1,-1,3,-3\text{ のいずれか}. さらに y=43t+3t\displaystyle y=\frac{4}{3}t+\frac{3}{t} が整数であることも必要なので,t=1,−1,3,−3t=1,-1,3,-3 の各場合を調べる。

tx=2t+3/ty=43t+3/t154/3+3=13/3 (整数でない)−1−5−4/3−3=−13/3 (整数でない)32⋅3+1=74+1=5 (整数)−3−6−1=−7−4−1=−5 (整数)\displaystyle \begin{array}{c|c|c} t & x=2t+3/t & y=\tfrac{4}{3}t+3/t\\\hline 1 & 5 & 4/3+3=13/3\ (\text{整数でない})\\ -1 & -5 & -4/3-3=-13/3\ (\text{整数でない})\\ 3 & 2\cdot3+1=7 & 4+1=5\ (\text{整数})\\ -3 & -6-1=-7 & -4-1=-5\ (\text{整数}) \end{array}

よって整数解を与えるのは t=3t=3(このとき x=7, y=5x=7,\ y=5)と t=−3t=-3(このとき x=−7, y=−5x=-7,\ y=-5)の2つに限る。

t=3, x=7, y=5t=3,\ x=7,\ y=5 のとき A=(75−3−7−7)=(75−10−7).A=\begin{pmatrix}7&5\\-3-7&-7\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}7&5\\-10&-7\end{pmatrix}. 検算:A2=(49−5035−35−70+70−50+49)=(−100−1)=−E≠EA^2=\begin{pmatrix}49-50&35-35\\-70+70&-50+49\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-1&0\\0&-1\end{pmatrix}=-E\neq E,A4=(−E)2=EA^4=(-E)^2=E で条件を満たす。また det⁡A=7⋅(−7)−5⋅(−10)=−49+50=1=−k\det A=7\cdot(-7)-5\cdot(-10)=-49+50=1=-k と整合し(k=−1k=-1),3x−3y−2t=21−15−6=03x-3y-2t=21-15-6=0 も成り立つ。

t=−3, x=−7, y=−5t=-3,\ x=-7,\ y=-5 のとき A=(−7−53+77)=(−7−5107).A=\begin{pmatrix}-7&-5\\3+7&7\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-7&-5\\10&7\end{pmatrix}. 同様に A2=−E≠EA^2=-E\neq E,A4=EA^4=E であり,条件をすべて満たす。

以上より,求める行列 AA は A=(75−10−7)またはA=(−7−5107)A=\begin{pmatrix}7&5\\-10&-7\end{pmatrix}\quad\text{または}\quad A=\begin{pmatrix}-7&-5\\10&7\end{pmatrix} の2つである。

この問題で使う考え方

  • 行列を用いた表現
  • 対偶・背理法による証明
  • 約数・倍数

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