(1) y=∣sinx∣ のグラフは,0≦x≦π では y=sinx とまったく同じ(sinx≧0 だから)山型の曲線(端点 (0,0),(π,0),頂点 (π/2,1))であり,これを x 軸方向に π ごとに繰り返し並べたグラフになる(π≦x≦2π では sinx≦0 なので ∣sinx∣=−sinx となり,やはり同じ山型が現れる)。グラフは常に y≧0 で,x=kπ(k は整数)で 0 となる山が等間隔に並ぶ形である。
周期であること: ∣sin(x+π)∣=∣−sinx∣=∣sinx∣ より π は ∣sinx∣ の周期である。
最小性:0<p<π が周期だとすると,x=0 を代入して ∣sinp∣=∣sin0∣=0よりsinp=0よりp=kπ (k は整数) となるが,0<p<π を満たす整数 k は存在しない。よって π より小さい正の周期はなく,基本周期は π である。
(2) 以下,g(x)=∣sin(mx)∣(≧0),h(x)=sin(nx) とおき,f(x)=g(x)h(x) と書く。p を f の(0でない)周期とする,すなわち f(x+p)=f(x)(すべての実数 x)(I) が成り立つとする。
(i) f(p/2)=f(−p/2)=0 の証明 まず f は奇関数である。実際 f(−x)=∣sin(−mx)∣sin(−nx)=∣sin(mx)∣⋅(−sin(nx))=−f(x). (I) に x=−2p を代入すると f(2p)=f(−2p). 一方,奇関数であることから f(−2p)=−f(2p). この2式より f(p/2)=−f(p/2),すなわち f(2p)=0,f(−2p)=0.
(ii) mp は π の整数倍 かつ np は 2π の整数倍 の証明 (i) より sin2mpsin2np=0 であるから,次のいずれかが成り立つ: (A) sin2mp=0の必要十分条件はmp が 2π の整数倍であること,(B) sin2np=0の必要十分条件はnp が 2π の整数倍であること.
ここで補題を2つ用意する(いずれも初等的な三角関数の性質):
補題1 sin(θ+α)=sinθ がすべての θ で成り立つための必要十分条件は α が 2π の整数倍であること。(十分性 は正弦関数の周期が 2π であることから成り立つ。必要性 は θ=0 を代入すると sinα=0,かつ θ=π/2 を代入すると cosα=1 となるので α は 2π の整数倍。)
補題2 ∣sin(θ+α)∣=∣sinθ∣ がすべての θ で成り立つための必要十分条件は α が π の整数倍であること。(十分性 は sin(θ+kπ)=(−1)ksinθ より成り立つ。必要性 は θ=0 を代入して sinα=0,よって α=jπ。)
(B) の場合(np は 2π の整数倍)を仮定する。 補題1(の 十分性)より h(x+p)=sin(nx+np)=sin(nx)=h(x) がすべての x で成り立つ。これを (I) の g(x+p)h(x+p)=g(x)h(x) に代入すると (g(x+p)−g(x))h(x)=0(すべての x). h(x)=sin(nx) の零点は x=kπ/n(k は整数)という孤立点のみだから,それ以外の x では g(x+p)=g(x) が成り立つ。孤立零点 x0=kπ/n については,その近くの(零点でない)点列 x0+ε (ε→0, ε=0) で g(x0+ε+p)=g(x0+ε) が成り立ち,g は連続関数(絶対値と正弦関数の合成)なので ε→0 の極限をとれば g(x0+p)=g(x0) も成り立つ。したがって g(x+p)=g(x)(すべての x), すなわち ∣sin(m(x+p))∣=∣sin(mx)∣ がすべての x で成り立つ。補題2の(必要性)より mp は π の整数倍。 この場合,仮定 np は 2π の整数倍 と合わせて,mp は π の整数倍 かつ np は 2π の整数倍 が成り立つ。
(A) の場合(mp は 2π の整数倍)を仮定する。 同様に補題2(十分性,α=mp は 2π の整数倍 であり、したがって π の整数倍)より g(x+p)=∣sin(mx+mp)∣=∣sin(mx)∣=g(x) がすべての x で成り立つ。(I) に代入すると g(x)(h(x+p)−h(x))=0(すべての x). g(x)=∣sin(mx)∣ の零点も x=jπ/m という孤立点のみだから,同様に「零点以外で h(x+p)=h(x)」→「連続性により孤立点でも成立」という手順で h(x+p)=h(x)(すべての x), すなわち sin(n(x+p))=sin(nx) がすべての x で成り立つ。補題1(の 必要性)より np は 2π の整数倍。これと仮定 mp は 2π の整数倍 であり、したがって π の整数倍 より,やはり mp は π の整数倍 かつ np は 2π の整数倍 が成り立つ。
(A),(B) いずれの場合も同じ結論が出るので,(A) または (B) が必ず成り立つことと合わせて, mp は π の整数倍であり,np は 2π の整数倍である。
(3) m,n は 1 以外の公約数をもたない自然数とする。
必要条件から十分条件へ (2) より,p(>0) が f の周期であるためには mp=aπ,np=2bπ(a,b は正の整数) と書けることが必要である。逆にこの形の p は実際に周期である。なぜなら,a が整数だから g(x+p)=∣sin(mx+aπ)∣=∣(−1)asin(mx)∣=∣sin(mx)∣=g(x), b が整数だから h(x+p)=sin(nx+2bπ)=sin(nx)=h(x) がすべての x で成り立ち,積をとれば f(x+p)=f(x) となるからである。 したがって,p>0 が f の周期であることは,ある正の整数 a,b が存在して mp=aπ, np=2bπ となることと同値である。
最小の p を求める mp=aπ, np=2bπ の両辺から p を消去すると maπ=n2bπよりan=2bm. gcd(m,n)=1 かつ m∣an だから m∣a。そこで a=mc(c は正の整数)とおくと,このとき p=maπ=cπ であり,また an=2bm に a=mc を代入すると mcn=2bm,すなわち b=2cn となる。b が正の整数であるための条件は「cn が偶数であること」である。
・ n が偶数のとき:c=1 でも cn=n は偶数なので条件を満たす。よって最小の c は 1,すなわち p=π が(存在しうる最小の)周期であり,実際に周期であることは上で確認済み。
・ n が奇数のとき:c=1 では cn=n は奇数となり不適。c=2 ならば cn=2n は偶数となり条件を満たす。よって最小の c は 2,すなわち p=2π が最小の周期である。
(周期は必ず p=cπ の形であり,c は「cn が偶数」という条件を満たす最小の正整数として一意に定まるので,これが基本周期である。)
以上より,関数 ∣sin(mx)∣sin(nx)(gcd(m,n)=1)の基本周期は {π2π(n が偶数のとき)(n が奇数のとき) である(この値は m の値には依存しない)。
検算
・ m=2,n=1(n奇数):予想は 2π。実際 f(x+π)=∣sin(2x+2π)∣sin(x+π)=∣sin2x∣(−sinx)=−f(x)=f(x) となり π は周期でない一方,f(x+2π)=∣sin2x∣sinx=f(x) で 2π は周期。整合する。
・ m=1,n=2(n偶数):予想は π。実際 f(x+π)=∣sin(x+π)∣sin(2x+2π)=∣sinx∣sin2x=f(x) となり成立し,x=π/4 で f(π/4+π/2)=f(3π/4)=−2/2=f(π/4)=2/2 より p/2=π/2 は周期でなく,π が最小であることとも整合する。