設定を整理する。f(x)=2x, g(x)=x, h(x)=2x+1 であり,x0=1 から出発して,2枚の硬貨を1回投げるごとに xn=⎩⎨⎧f(xn−1)g(xn−1)h(xn−1)(2枚とも表:確率 41)(1枚が表・1枚が裏:確率 21)(2枚とも裏:確率 41) により xn を定める(2枚の硬貨は表裏同様に確からしく,かつ各回の試行は独立である)。
(1) すべての自然数 n に対して 0<xn≦1 が成り立つことを,数学的帰納法で示す。
まず,0<x≦1 を満たす任意の実数 x に対して,f,g,h の値をそれぞれ調べる。 0<x≦1 より 0<f(x)=2x≦21≦1,0<g(x)=x≦1, 1<x+1≦2 より 21<h(x)=2x+1≦1. したがって,0<x≦1 を満たす x に f,g,h のいずれを施しても,得られる値は必ず 0 より大きく 1 以下になる。
n=0 のとき x0=1 であり 0<x0≦1 を満たす。n−1 回目まで 0<xn−1≦1 が成り立つと仮定すると,xn は f(xn−1),g(xn−1),h(xn−1) のいずれか一つの値であり,上の考察によりいずれの場合も 0<xn≦1 となる。よって数学的帰納法により,すべての自然数 n に対して 0<xn≦1 が成り立つ。 ■
(2) x0=1 である。f(1)=21, g(1)=1, h(1)=21+1=1 であるから, x1=⎩⎨⎧211(確率 41, 2枚とも表)(確率 21+41=43, 1表1裏または2枚とも裏) x1=21 は 31<x1≦32 に,x1=1 は 32<x1≦1 に入るから, p1=P(0<x1≦31)=0,q1=P(31<x1≦32)=41,r1=P(32<x1≦1)=43. (検算:p1+q1+r1=0+41+43=1。)
(3) xn−1 の値が属する区間ごとに,f(xn−1),g(xn−1),h(xn−1) がどの区間に入るかを調べる。
(i) 0<xn−1≦31(確率 pn−1)のとき 0<f(xn−1)=2xn−1≦61≦31,0<g(xn−1)=xn−1≦31, 31≦21<h(xn−1)=2xn−1+1≦32. よって f,g は pn に,h は qn に寄与する。
(ii) 31<xn−1≦32(確率 qn−1)のとき 0≦61<f(xn−1)=2xn−1≦31,31<g(xn−1)=xn−1≦32, 32<h(xn−1)=2xn−1+1≦65≦1. よって f は pn,g は qn,h は rn に寄与する。
(iii) 32<xn−1≦1(確率 rn−1)のとき 31<f(xn−1)=2xn−1≦21≦32,32<g(xn−1)=xn−1≦1, 32≦65<h(xn−1)=2xn−1+1≦1. よって f は qn,g,h は rn に寄与する。
以上と,f,g,h が選ばれる確率がそれぞれ 41,21,41 であることをあわせると, pn=43pn−1+41qn−1,qn=41pn−1+21qn−1+41rn−1,rn=41qn−1+43rn−1 (n=1,2,3,…,ただし x0=1 に対応して p0=0, q0=0, r0=1 とする)。 検算:n=1 を代入すると p1=43⋅0+41⋅0=0, q1=41⋅0+21⋅0+41⋅1=41, r1=41⋅0+43⋅1=43 となり,(2)の結果と一致する。
(4) (3)の第1式と第3式の辺々を引くと,qn−1 の項が消えて pn−rn=(43pn−1+41qn−1)−(41qn−1+43rn−1)=43(pn−1−rn−1). したがって数列 {pn−rn} は公比 43 の等比数列であり,初項は p0−r0=0−1=−1 であるから, pn−rn=(p0−r0)(43)n=−(43)n. 検算:n=1 で p1−r1=0−43=−43=−(3/4)1 と一致する。
(5) 各 n で pn+qn+rn=1(3つの排反な事象の和事象が全事象)であるから,qn−1=1−pn−1−rn−1 を(3)の第1式に代入して pn=43pn−1+41(1−pn−1−rn−1)=21pn−1−41rn−1+41. さらに(4)の結果 rn−1=pn−1+(43)n−1 を代入すると,pn−1 の項がまとまり, pn=21pn−1−41{pn−1+(43)n−1}+41=41pn−1−41(43)n−1+41(n=1,2,3,…). これは pn のみについての1階線形漸化式である。定数項 41 に対する特殊解を pn=A(定数)として代入すると A=41A+41 より A=31。等比項 −41(43)n−1 に対する特殊解を pn=B(43)n とおいて代入すると B(43)n=41B(43)n−1−41(43)n−1 より 43B=41B−41 より B=−21. よって一般解は pn=C(41)n+31−21(43)n (Cは定数,斉次解 (41)n を含む)。p0=0 を用いると 0=C+31−21 より C=61. したがって pn=31−21(43)n+61(41)n(n=0,1,2,…). 検算:n=1 で p1=31−21⋅43+61⋅41=248−249+241=0 となり(2)と一致。さらに(3)から直接 p2=43p1+41q1=41⋅41=161 を計算すると,公式でも p2=31−21⋅169+61⋅161=9632−9627+961=966=161 となり一致する。また n→∞ で pn→31 となり,対称な遷移構造から pn,qn,rn がいずれも 31 に収束するという直感とも整合する。 一般項を求める別の短い計算として、qn=41(pn−1+rn−1)+21qn−1=41+41qn−1 より qn=31−31(41)n。これと pn+rn=1−qn、(4)を加減すれば(5)を得る。